この記事で得られること
- 銀行内部の格付け(債務者区分・スコアリング)の仕組みがわかる
- 自社の格付けを上げるための具体的なアクションプランがわかる
- 融資の金利引き下げ交渉を有利に進めるコツがわかる
(この記事は約15分で読めます)
「うちの金利、他社より高くないか?」「希望した金額の融資を断られてしまった…」
経営者であれば、一度はこんな悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。実はその悩み、銀行があなたの会社につけている「格付け」が原因かもしれません。
銀行員時代、私は数多くの中小企業の融資審査に携わってきました。その経験から断言できるのは、銀行格付けを理解している経営者とそうでない経営者とでは、引き出せる融資の条件が全く違うということです。
この記事では、これまで銀行の内部でしか語られてこなかった「格付け」の決まり方から、自社の評価を上げて有利な融資を引き出す具体的な方法まで、元銀行員の視点でお伝えします。
目次
1. 【元銀行員が暴露】あなたの会社の「銀行格付け」はこう決まる!融資の金利交渉を有利に進める方法
1-1. そもそも「銀行格付け」とは?確認必須の基本と重要性
銀行格付けとは、銀行が融資先の企業を評価しランク付けする内部的な仕組みのことで、いわば「企業の通信簿」です。銀行は融資先の企業を、決算書の内容や事業の将来性などから総合的に評価し、「1ランク」「2ランク」といった形でランク付けしています。
この格付けは、銀行が融資の可否や金利、融資額といった貸し出し条件を決めるための、最も重要な判断基準です。当然、格付けが高ければ「安全な貸出先」として金利が低くなったり、より大きな金額を借りられたりします。逆に格付けが低いと、貸し倒れリスクが高いと判断され、取引条件は厳しくなってしまうのです。つまり、この格付けを理解し、改善することが有利な資金調達への第一歩となります。
1-1-1. 銀行格付けの見方:自社の評価は通知される?どこで確認できるのか
では、自社の格付けはどうすれば確認できるのでしょうか。残念ながら、この格付けは銀行の内部資料であるため、「あなたの会社の格付けは〇ランクです」といった通知が送られてくることはありません。しかし、自社の評価を知る方法はあります。
最も直接的なのは、銀行の担当者に聞いてみることです。「今後の経営改善の参考にしたいので、当行における弊社の評価を教えていただけないでしょうか?」と真摯に尋ねてみましょう。良好な関係が築けていれば、ヒントをくれることがあります。
もし直接教えてくれなくても、融資の条件からある程度推測が可能です。例えば、低い金利での「プロパー融資(保証協会の保証がない融資)」の提案があれば、格付けは高いと判断できます。逆に、金利が高かったり、保証協会付き融資しか提案されなかったりする場合は、格付けが伸び悩んでいるサインかもしれません。
1-1-2. 銀行格付けのシミュレーション:自社の格付けを簡易的にチェックする方法
銀行に聞く前に、まずは自社の現状を客観的に把握したい、という方も多いでしょう。決算書さえあれば、銀行が格付けで重視するポイントを簡易的にセルフチェックできます。ここでは、特に重要な2つの指標をご紹介します。
自己資本比率(会社の安全性)
会社の総資産のうち、返済不要な自分のお金(純資産)がどれくらいの割合を占めるかを示す指標です。この比率が高いほど、財務が安定しており倒産しにくい会社と評価されます。
計算式: 自己資本比率(%)=(純資産/総資産)×100
目安: 業種にもよりますが、30%を超えると優良、最低でも10%は維持したいところです。
債務償還年数(借金の返済能力)
有利子負債(借入金など)を、会社の利益で何年あれば完済できるかを示す指標です。年数が短いほど、返済能力が高いと評価されます。
計算式:債務償還年数 (年) = 有利子負債(*)/営業キャッシュフロー(または経常利益+減価償却費)
目安: 一般的に10年以内が健全性の目安とされます。
(*)有利子負債とは、利息を付けて返済しなければならない負債のことです。具体的な例としては、銀行からの借入金や社債などが該当します。
1-2. なぜ多くの企業が信用保証協会を利用するのか?メリットを再確認
もし自社の銀行格付けが低い状態のまま放置してしまうと、経営に様々なデメリットが生じます。それは単に「融資が受けにくい」というだけではありません。
最も直接的なのが、融資の金利が高くなることです。例えば、3,000万円の融資で金利が年1%違うだけで、年間の利息負担は30万円も変わります。これが5年、10年と続けば、数百万円の差になり、会社の利益を圧迫します。
また、希望する金額の融資が受けられないケースも増えます。銀行には格付けに応じた融資上限額の目安があるため、「あと1,000万円あればこの設備投資ができるのに…」という成長のチャンスを逃すことにも繋がりかねません。さらに、銀行が直接リスクを負う「プロパー融資」を断られ、常に保証協会の保証を求められるなど、選択肢の狭い資金調達を余儀なくされるのです。
プロパー融資と保証協会付き融資の違いやメリット・デメリットについては、
👉「プロパー融資とは?保証協会融資から移行する3ステップ【銀行審査攻略】」で詳しく解説しています。
2. 銀行格付けの2大評価軸!「債務者区分」と「スコアリングシステム」を徹底解説
銀行があなたの会社をどう見ているのか。その評価は、主に「債務者区分(さいむしゃくぶん)」と「スコアリングシステム」という2つの大きな軸で決まります。
「債務者区分」は、企業の財務状況に応じた健康診断の“総合判定”のようなもの。一方で「スコアリングシステム」は、決算書データを基にしたAIによる“自動採点”です。この2つは密接に関係しており、両方を理解することが格付け対策の鍵となります。まずは、より重要度の高い「債務者区分」から見ていきましょう。
2-1. まずはこれを知るべき!銀行格付けの軸となる『債務者区分』とは?
「債務者区分」とは、銀行が融資先の財務状況の健全性を判断し、ランク付けするための最も重要な内部評価基準です。これは各銀行が独自に決めているものではなく、金融庁の指針に基づいており、すべての銀行でほぼ共通の考え方が用いられています。
簡単に言えば、「この会社は財務的に健康か、それとも注意が必要か」を分類するものです。この区分によって、銀行がその企業に対して積まなければならない貸倒引当金(貸し倒れに備えるお金)の額が変わるため、銀行経営の根幹に関わる非常にシビアな評価と言えます。したがって、一度決まった区分は簡単には覆らず、融資条件に絶大な影響を与えます。
2-1-1. 正常先から破綻懸念先まで、債務者区分の5つの分類と融資への影響

債務者区分は、大きく5つに分類されます。特に中小企業にとって重要なのは、上位の3つ、「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」です。それぞれの定義と、融資に与える影響を以下の表にまとめました。自社がどこに当てはまりそうか、イメージしながらご覧ください。
| 債務者区分 | 主な定義 | 融資への影響(一例) |
|---|---|---|
| 正常先 | 業績・財務内容が良好で、特に問題がない。 | 最も有利。プロパー融資も可能で、低金利での交渉もしやすい。 |
| 要注意先 | 業績が低迷している、または返済に遅延がある。 | 新規融資は慎重に。保証協会付きが中心となり、金利も高くなる。 |
| 破綻懸念先 | 実質的に債務超過。事業の継続が危ぶまれる。 | 原則、新規融資は不可。既存融資の返済猶予(リスケ)等を検討。 |
| 実質破綻先 | 経営破綻の状態にあるが、法的手続きは未了。 | 新規融資は絶望的。債権回収の段階に入る。 |
| 破綻先 | 法的に経営破綻(倒産)している。 | 新規融資は絶望的。債権回収の段階に入る。 |
あなたの会社が「正常先」を目指すべきなのは、言うまでもありません。
2-1-2. なぜ一度下がった債務者区分は簡単には上がらないのか?
「一度赤字になったら、翌年黒字になってもなかなか評価が戻らない…」と感じる経営者は少なくありません。その理由は、銀行の厳格な内部手続きと減点主義の文化にあります。
債務者区分を引き下げるのは比較的簡単ですが、一度下げた区分を引き上げるには、「なぜ安全だと判断できるのか」という客観的で強力な根拠が求められます。そのためには、単年度の黒字回復だけでは不十分で、「2期連続の黒字化」や「債務超過の解消」といった明確な改善実績が必要です。
また、万が一区分を上げた後にその企業が倒産した場合、担当者や支店の責任問題に発展しかねません。そのため、どうしても評価に対して慎重になりがちです。だからこそ、企業側から積極的に「わが社はこれだけ改善しました」という根拠ある資料を提示し、銀行を安心させることが重要なのです。
2-2. AIによる自動評価!銀行の「スコアリングシステム」の仕組み
債務者区分が健康診断の「総合判定」なら、「スコアリングシステム」は身長や体重、血圧などを測定する「自動計測器」のようなものです。
これは、あなたの会社の決算書データをシステムに入力し、AIが過去の膨大な倒産企業データなどと照らし合わせて、企業の信用力を自動的に点数化(スコアリング)する仕組みです。この点数が高いほど「倒産リスクが低い優良企業」と判断されます。
多くの銀行では、融資審査の一次判断としてこのスコアリングシステムを利用しており、審査のスピードアップと標準化に役立てています。ただし、これはあくまで過去の決算数値に基づいた定量的な評価であり、会社の将来性まですべてを測れるわけではありません。
2-2-1. スコアリングで特に重視される決算書の3つのポイント
では、スコアリングシステムでは決算書のどのような点が重視されるのでしょうか。銀行やシステムによって評価項目は異なりますが、共通して重視されるのは以下の3つの視点です。
1.安全性(倒産しにくさ)
財務体質がどれだけ盤石かを示します。特に自己資本比率は最重要項目です。借入への依存度が低く、財務が安定しているかが評価されます。
2.収益性(稼ぐ力)
本業でどれだけ効率的に利益を上げられているかを見ます。売上高経常利益率などで判断され、赤字決算は当然ながら大幅なマイナス評価となります。
3.返済能力(キャッシュフロー)
「利益は出ているのに現金がない」という黒字倒産を避けるため、銀行はキャッシュフローを重視します。借入金をきちんと返済できる現金を生み出せているか、債務償還年数などで評価されます。
2-2-2. スコアリングシステムの限界と、だからこそ重要になる「定性評価」
決算書の数字が悪く、スコアリングの点数が低いと、もう融資は受けられないのでしょうか?答えは「NO」です。なぜなら、スコアリング評価は万能ではないからです。
スコアリングは、あくまで過去の財務データに基づいた「定量評価」に過ぎません。そのため、設立間もない企業や、今は赤字でも将来大きく成長する可能性を秘めたベンチャー企業などの「将来性」を正しく評価することは困難です。
そこで重要になるのが、数字には表れない企業の魅力を評価する「定性評価」です。例えば、経営者の熱意や経営能力、独自の技術やノウハウ、優れたビジネスモデル、今後の成長が見込める事業計画などがこれにあたります。この定性評価でスコアリングの低さをカバーすることこそ、格付けを上げるための重要な戦略なのです。
特に三重県は製造業・建設業・運送業・サービス業など中小企業が多く、企業の将来性や事業計画を丁寧に伝えることでスコアリングの不足をカバーできた事例が非常に多い地域です。 実際、四日市エリアでは「決算書の数値は弱いが、事業計画の評価によってプロパー融資が承認された」ケースも増えています。
3. 銀行格付けの上げ方!具体的な改善方法を徹底ガイド
ここまで銀行格付けの仕組みについて解説してきました。ここからは、いよいよ本題である「どうすれば格付けを上げられるのか?」という具体的な改善方法を徹底ガイドします。
銀行の評価軸は、決算書の数字で評価する「定量評価」と、数字以外の魅力で評価する「定性評価」の2つでしたね。つまり、格付けを上げるには、この両面からのアプローチが不可欠です。まずは、評価の土台となる「定量評価」の改善策から見ていきましょう。
3-1. 決算書の数字を改善!銀行評価を上げるための定量評価対策
銀行の定量評価、特にスコアリングシステムの点数を上げるには、決算書の数値を改善することが最も直接的な対策です。もちろん、これは一朝一夕に実現できるものではなく、日々の経営努力の積み重ねが問われます。
重要なのは、単に決算書の見栄えを良くするための小手先のテクニックに走るのではなく、実際に利益を出せる「筋肉質な財務体質」を作り上げることです。銀行は数多くの決算書を見ているプロですから、実態の伴わない数字はすぐに見抜かれてしまいます。ここでは、特に銀行が重視する「自己資本比率」と「キャッシュフロー」の改善に焦点を当てて解説します。
3-1-1. 自己資本比率とキャッシュフローの改善策
企業の安全性と返済能力を示す自己資本比率とキャッシュフローは、銀行評価の根幹です。これらを改善するための具体的なアクションプランを以下に示します。自社で取り組めるものがないか、ぜひチェックしてみてください。
【自己資本比率を改善するアクション】
- 利益を出し、内部留保を厚くする: 最も王道かつ評価される方法です。
- 経営者からの借入金を資本金に振り替える(DES): 中小企業でよくある「役員借入金」を資本とみなすことで、自己資本を増やせます。
- 増資を行う: 新たな出資を募り、自己資本を直接的に増やします。
- 資産を圧縮する: 不要な土地や有価証券などを売却し、借入金の返済に充てます。
【キャッシュフローを改善するアクション】
- 売掛金の回収を早める: 回収サイト(期間)の短い取引を増やす、早期入金を促すなどの対策があります。
- 在庫を圧縮する: 過剰な在庫は資金を寝かせているのと同じです。適正在庫を維持し、不良在庫は早期に処分します。
- 支払サイトを交渉する: 買掛金などの支払いサイトを可能な範囲で延長してもらう交渉も有効です。
自社で改善を進めたい方は、
👉「資金管理の重要性と経営における基礎知識」もご参照ください。
3-1-2. 銀行格付けを上げるために税理士とどう連携すべきか
決算書の改善を自社だけで進めるのは簡単ではありません。そこで頼りになるのが、最も身近な専門家である税理士です。しかし、ただ決算申告を依頼するだけでは不十分です。
最も重要なのは、決算が締まる「前」に相談することです。顧問税理士に決算の着地見込みを予測してもらい、「納税額」だけでなく「銀行評価」の観点からアドバイスをもらいましょう。時には、節税を優先するよりも、しっかりと利益を計上して銀行からの信頼を得る方が、将来的なメリットが大きい場合もあります。
また、月次決算の体制を整えることも税理士との重要な連携ポイントです。毎月の試算表をスピーディーに作成することで、経営状況をタイムリーに把握できるだけでなく、その資料を銀行に定期的に提出すれば、透明性の高い企業として信頼関係が深まります。
3-2. 数字以外の魅力を伝える!「定性評価 銀行」で評価されるポイント

「今期は赤字になってしまった…もうダメだ」と諦めるのは早すぎます。スコアリングの点数(定量評価)が振るわなくても、それを補って余りあるのが「定性評価」です。
銀行員も人間です。稟議を書く際には、単なる数字の羅列だけでなく、「この経営者は信頼できる」「この会社の事業には将来性がある」といった、上司を説得するためのストーリーを求めています。そのストーリーの材料となるのが、決算書には表れないあなたの会社の魅力、すなわち定性情報なのです。
具体的には、以下のような点が評価されます。
- 経営者の誠実な人柄や経歴、事業への熱意
- 独自の技術力、ノウハウ、特許、許認可
- 安定した販売先や、強力な仕入先との関係
- 明確な事業計画と、高い将来性・成長性
3-2-1. 経営者の能力と事業の将来性をアピールする事業計画書の作り方
定性評価を効果的にアピールするための最強のツールが「事業計画書」です。ただし、単に「夢」や「目標」を語るだけでは評価されません。銀行員を納得させる計画書には、客観性と具体性が不可欠です。
まずは、SWOT分析などを用いて、自社の「強み」「弱み」と、市場の「機会」「脅威」を客観的に分析しましょう。その上で、「この強みを活かして、この機会を掴むために、具体的なアクションを起こす」という一貫したストーリーを描きます。
そして、そのストーリーを具体的な数値計画に落とし込むことが極めて重要です。「この設備を導入すれば、生産性が〇%向上し、売上が〇円増加する」といったように、行動計画と損益計画、資金繰り計画がしっかりと連動していることを示してください。銀行は、この「物語と数字の整合性」をシビアに見ています。
三重県の金融機関では、特に製造業・建設業・環境業・運送業など設備投資を伴う企業に対し、「事業計画の整合性」「設備投資の回収可能性」「財務の改善ストーリー」が明確に示されている資料が高く評価される傾向があります。
ここを押さえるだけで、金利交渉・融資枠の増額・プロパー提案が一気に通りやすくなります。
銀行に刺さる事業計画書の書き方は
👉「事業計画書の作成方法を徹底解説|元銀行員の診断士直伝」で紹介しています。
3-2-2. 銀行が求める「企業の強み」のアピール術と情報提供のコツ
あなたの会社の「強み」は、あなたが思っている以上に銀行には伝わっていません。だからこそ、積極的にアピールする必要があります。ここでも重要なのは、「銀行員が稟議を書きやすくなるように」という視点です。
例えば、「高い技術力」が強みなら、ただ口で言うだけでなく、取得した特許の資料や、製品がメディアで紹介された記事のコピーなどを添えましょう。「顧客からの厚い信頼」が強みなら、顧客からの感謝の手紙や、長年の取引実績がわかる資料を提示するのです。
特におすすめなのが、自社のビジネスモデルや強み、今後の展望などをA4一枚程度にまとめた「会社概要資料」を作成し、決算書と一緒に提出することです。担当者はそれを基に上司へ説明できるため、あなたの会社の応援団になってもらいやすくなります。このように、少しの工夫で担当者を味方につけることができるのです。
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4. 銀行格付けに関するよくある質問【FAQ】
ここでは、経営者の皆様からよく寄せられる、銀行格付けや融資に関する疑問について分かりやすくお答えします。これまでの内容の復習も兼ねて、ぜひ参考にしてください。
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決算書が弱い場合でも銀行からの評価を上げる方法はありますか?
-
あります。決算書の数字が弱くても、定性評価(数字以外の情報)を丁寧に伝えることで評価を底上げすることは可能です。
銀行は定量評価(財務数値)だけで企業を判断しているわけではありません。
特に中小企業では、以下のような「将来性・信頼性・改善余地」の根拠となる情報が格付け改善に大きく影響します。
銀行の定性評価でプラスに働く情報例
- 新規取引・大型受注・OEM契約・サブスク化などの成長要因
- 設備投資による生産性向上の見込み
- 新規市場・新製品・新サービスの計画
- 主要取引先との長期取引や契約継続証明
- 人材採用・組織強化・内部管理体制の改善
- 経営改善計画の実行内容と進捗
銀行担当者は、こうした情報を基に稟議書を作成します。
そのため 「事業計画書」「会社概要資料」「設備投資理由書」などのサポート資料を決算書とセットで提出するだけで評価が改善された事例は多数あります。
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プロパー融資と保証協会付き融資の違いとは?
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一番の違いは「銀行が負うリスクの大きさ」です。 これによって審査の難易度や金利条件が変わってきます。
プロパー融資は、銀行が100%自らの責任で実行する融資のことです。もし会社が倒産した場合、その損失はすべて銀行が被ります。そのため、審査は非常に厳しく、格付けの高い優良企業しか利用できません。言わば、プロパー融資を受けられることは銀行からの「信頼の証」であり、企業のステータスにもなります。
一方、保証協会付き融資は、公的機関である「信用保証協会」が保証人となってくれる融資です。万が一の際は保証協会が銀行に返済を肩代わりするため、銀行のリスクは大幅に軽減されます。そのため、設立間もない企業や、まだ実績の少ない中小企業でも融資を受けやすくなっています。ただし、企業側は銀行に支払う金利とは別に、保証協会へ「保証料」を支払う必要があります。
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「プロパー融資の条件」を引き出すにはどうすればいい?
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「この会社なら安心して直接お金を貸せる」と銀行に信頼してもらうことが全てです。 その信頼を勝ち取るためには、これまで解説してきた「定量評価」と「定性評価」の両面を磨き上げる必要があります。
まず大前提として、優れた決算内容、特に複数期にわたる黒字経営は絶対条件です。高い自己資本比率を維持し、安定したキャッシュフローを生み出していることを数字で証明しなくてはなりません。
その上で、将来性のある事業計画を提示することが重要です。経営者自身が定期的に銀行を訪問し、事業の進捗や今後の展望、熱意をもって語りましょう。こうした地道なコミュニケーションを通じて、担当者にあなたの経営能力を理解してもらい、個人的な信頼関係を築くことが、稟議を後押しする強力な力となります。まずは着実な返済実績を積み重ね、銀行との信頼関係を深めていくことが、プロパー融資への一番の近道です。
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赤字決算だと銀行格付けは必ず下がりますか?
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必ず下がるとは限りませんが、下がる可能性は高いと言えます。重要なのは、その「赤字の理由」と「今後の対策」を銀行にどう説明するかです。
銀行が最も懸念するのは、売上不振やコスト増など、事業の根本的な問題に起因する「悪い赤字」です。これが続くと、格付けは大きく下がり、融資条件も厳しくなります。
一方で、将来の成長を見据えた設備投資や研究開発費の増加による一時的な赤字は、「前向きな赤字」として説明することが可能です。この場合、「なぜ赤字になったのか」「その投資が将来どれだけの利益を生むのか」を、説得力のある事業計画書で合理的に説明できれば、格付けへの影響を最小限に食い止めることができます。
赤字という事実を隠さず、正直に、かつ前向きな姿勢で銀行に報告・相談することが、信頼関係を維持する上で何よりも大切です。
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銀行との面談はどれくらいの頻度が理想ですか?
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少なくとも年4回(四半期に1回)は実施できるように意識しましょう。
銀行が安心して融資しやすくなる企業は「情報を自ら開示し、変化や成長を見せ続けられる企業」 です。
タイミング 面談内容 決算書完成時 1年の成果を説明(最も重要) 第1四半期の試算表 計画進捗・受注状況・設備投資の検討 第2四半期の試算表 半期時点での業績見込み・課題と対策 第3四半期の試算表 翌期の設備投資・借換・融資の検討 面談で意識すべきことは、
- 良い情報だけでなく「課題 → 対策」を含めて伝える
- 社内資料(会社概要、事業計画、受注実績)を持参する
- 「御行をメイン、準メインで考えている」というスタンスを示す
これを継続している企業は、金利交渉・プロパー融資・融資枠の増額が通りやすい傾向があります。
5. 実践編!明日からできる「融資の金利交渉」と有利な条件を引き出す具体策
さあ、ここからは総仕上げの実践編です。銀行格付けの仕組みを理解し、自社の評価を上げる努力を続けてきたなら、次はいよいよ有利な融資条件を引き出すための「交渉」にチャレンジしましょう。
「交渉」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、心配はいりません。しっかりとした準備と、ちょっとしたコツさえ知っていれば、成功率は格段に上がります。ここでは、明日からすぐに使える具体的な交渉術と、銀行担当者をあなたの会社の最強のパートナーに変えるためのコミュニケーション戦略を伝授します。
5-1. 「融資の金利交渉」を成功に導くための準備と最適なタイミング
金利交渉を成功させるには、「なぜ金利を下げてほしいのか」という明確な根拠を準備することが不可欠です。「何となく高いから下げてほしい」というお願いでは、銀行は動きません。
交渉の武器となるのは、これまでに解説してきた「格付け向上のための取り組み」そのものです。増収増益を達成した決算書、改善された自己資本比率を示す試算表、将来性を感じさせる事業計画書など、自社のポジティブな材料を揃えましょう。
そして、交渉には最適なタイミングがあります。やみくもにアプローチするのではなく、①業績が良かった決算報告の時、②新たな設備投資などで新規融資の相談をする時、③既存の融資の返済が進み、借り換えを検討する時などを狙うのが効果的です。特に、年に一度の決算報告は絶好の機会と言えます。
5-1-1. 交渉材料の集め方:他行の見積もりを効果的に使う方法
交渉を有利に進めるための強力な材料が、他の銀行からの融資提案(相見積もり)です。現在のメインバンク以外の銀行にも決算書などを持参して相談し、「もし御行から融資を受けるとしたら、どのような条件になりますか?」とヒアリングしてみましょう。
ここで非常に重要なのが、その見積もりの「使い方」です。「A銀行は金利1%で貸してくれると言ってますよ。御行はどうなんですか?」といった高圧的な態度は絶対にNGです。これは担当者のプライドを傷つけ、関係を悪化させるだけです。
正解は、「今後もメインバンクとして御行とお付き合いを続けたい」という姿勢を明確に示した上で、相談ベースで切り出すことです。「他行さんからこのような好条件を頂いたのですが、何とか近い条件でご検討いただくことはできませんでしょうか」と謙虚に相談することで、担当者も「優良な取引先を逃したくない」と考え、前向きに対応してくれる可能性が高まります。おける基礎知識」もご参照ください。。
5-1-2. 決算後の報告は絶好の交渉チャンス
年に一度の決算報告は、金利交渉を行う上でまさに絶好のタイミングです。良い決算内容は、あなたの会社がこの1年間で成長し、財務の安全性が高まったことの何よりの証明だからです。銀行側も、貸し倒れリスクが低下した優良な取引先として、あなたの会社への評価を改めています。
まずは決算報告のアポイントを取り、前期の頑張りをしっかりとアピールしましょう。担当者から「素晴らしい内容ですね!」といったポジティブな反応を引き出し、場の雰囲気が良くなったところで、自然な流れで切り出します。
「ありがとうございます。皆様のお力添えのおかげです。業績も安定して参りましたので、現在お借りしている融資の金利について、少しご見直しいただくことは可能でしょうか」
このように、感謝の気持ちと共に切り出すのが、交渉を円滑に進めるスマートな方法です。
5-2. 銀行担当者を味方につけるコミュニケーション戦略

有利な融資条件を引き出す上で、最終的に最も重要になるのは、銀行の担当者を「味方」につけることです。融資の最終決裁を下すのは本部ですが、その稟議書を作成し、社内であなたの会社の魅力をプレゼンしてくれるのは、目の前の担当者なのです。
担当者を、単なる手続きの相手と考えるのではなく、自社の成長を共に目指す「パートナー」と捉えましょう。彼らに「この会社を応援したい」「この経営者の力になりたい」と思ってもらうことができれば、融資審査は格段にスムーズに進みます。次の項目では、担当者を最強の味方にするための具体的なコミュニケーション術を解説します。
5-2-1. 定期的な情報提供(試算表など)が信頼関係を築く
担当者を味方につける第一歩は、こまめな情報提供です。融資をお願いする時だけ連絡するのではなく、日頃から良好な関係を築いておくことが信頼の土台となります。
最も効果的なのは、銀行から言われる前に、自社から積極的に情報を提供していく姿勢です。例えば、毎月の試算表が完成したらすぐに持参して報告する、大きな受注が決まったりメディアで紹介されたりしたら電話一本でも良いので伝える、といった行動です。
もちろん、良い情報だけでなく、業績が少し落ち込んだ時などのネガティブな情報も、隠さずに早めに伝えることが重要です。「実は今、こういう課題があるのですが、このように対策していくつもりです」と正直に相談することで、経営者の誠実さが伝わり、かえって信頼が深まるのです。
5-2-2. 「言われたことだけやる」担当者から、積極的に提案してくれる担当者へ
「うちの担当者は事務的で、何も提案してくれない」と感じることもあるかもしれません。しかし、経営者側の働きかけで、担当者を「待ち」の姿勢から「攻め」の姿勢に変えることは可能です。
そのためには、担当者に「この会社に関わると、自分の実績にも繋がる」と思ってもらうことが重要です。会社の将来ビジョンや事業計画を熱く語り、「この会社は将来大きく成長するかもしれない」という期待感を抱かせましょう。
また、自社の業界動向や今後の計画を分かりやすく説明することで、担当者は「それなら、あの補助金が使えますよ」「こんな新しい融資制度がピッタリかもしれません」と、提案の糸口を見つけやすくなります。ただ待つのではなく、「何かうちで活用できる制度はありませんか?」と積極的に質問し、担当者が活躍できる「出番」を作ってあげることも、良い関係を築くための秘訣です。
6. 専門家と連携して最短で成果を出す!三重県・東海圏で銀行交渉に強い中小企業診断士の活用法
ここまで銀行格付けを上げるための様々なノウハウをお伝えしてきましたが、「本業が忙しくて、なかなかそこまで手が回らない」というのが多くの経営者の本音ではないでしょうか。
日々の経営を行いながら、決算書の分析、事業計画の策定、そして銀行との交渉準備まで、すべてを完璧にこなすのは至難の業です。もしあなたが、より早く、より確実に成果を出したいとお考えなら、専門家と連携することも有効な選択肢の一つです。特に、三重県(四日市市や津市など)で百五銀行や三十三銀行といった地域の金融機関との交渉経験が豊富な中小企業診断士は、あなたの会社の力強い味方となってくれるはずです。
6-1. なぜ自社だけでの銀行対策には限界があるのか?
「できることは自分でやりたい」と考えるのは、経営者として当然のことです。しかし、銀行対策においては、自社だけでは越えられない「3つの壁」が存在します。
| 障壁 | 自社だけでは越えられない理由 |
|---|---|
| 時間の壁 | 経営者は常に多忙です。銀行に提出する説得力のある資料を作成したり、交渉の準備をしたりするには、想像以上の時間と労力がかかります。その結果、対策が中途半端になってしまうケースは少なくありません。 |
| 知識の壁 | 銀行の評価ポイントや内部事情は、外部からは見えにくいものです。元銀行員などの経歴を持つ専門家が持つ知識やノウハウを活用することで、より的確で効果的な対策を打つことが可能になります。 |
| 客観性の壁 | 自社のこととなると、どうしても主観的な視点になりがちです。第三者である専門家の客観的な視点が入ることで、自社では気づかなかった「真の強み」や「改善すべき弱点」が明確になり、銀行に響くアピールができるようになります。 |
6-2. 三重県、東海圏の中小企業診断士が提供できる具体的なサポート内容(事業計画策定・銀行面談同行)
私たちのような銀行交渉に強い中小企業診断士は、単にアドバイスをするだけではありません。三重県の中小企業の皆様が具体的な成果を出せるよう、ハンズオン(伴走型)でサポートします。
財務分析と課題の見える化|まずは決算書をプロの視点で分析し、あなたの会社の財務上の強みと弱み、そして銀行格付けにおける課題点を分かりやすく「見える化」します。
銀行に響く事業計画書の策定支援|経営者様の想いやビジョンを丁寧にヒアリングしながら、銀行が「この会社を応援したい!」と思えるような、客観的なデータと熱意が両立した事業計画書を一緒に作り上げます。
銀行面談への同行|最も心強いサポートの一つが、銀行との面談への同行です。専門家が同席することで、難しい質問にも的確に答えることができ、経営者様は安心して事業の魅力を語ることに集中できます。銀行側にも「専門家を交えて本気で経営改善に取り組んでいる」という姿勢が伝わり、交渉を有利に進めることができます。
7. まとめ|銀行格付けを正しく理解し、主体的な資金調達で会社を成長させよう
今回は、元銀行員の視点から「銀行格付け」の仕組みと、その評価を上げて有利な融資を引き出すための具体的な方法を解説してきました。
最も重要なメッセージは、銀行格付けは「付けられる」ものではなく、自社の努力で「上げていく」ものだということです。決算書の内容を改善し、事業の魅力を積極的に伝えることで、銀行との関係は「お金を借りる側」と「貸す側」という受け身の関係から、事業の成長を目指す対等な「パートナー」へと変わっていきます。
銀行格付けを正しく理解し、主体的に資金調達戦略を立てることは、会社を安定させ、さらなる成長軌道に乗せるための強力なエンジンとなります。この記事が、あなたの会社の未来を切り拓く一助となれば幸いです。
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[執筆者]
合同会社デザイム 代表社員 水町 新
経営コンサルタント/中小企業診断士
三重銀行(現三十三銀行)での法人融資に従事後、コンサルティング会社へ転職。累計100億円超の資金調達支援の実績あり。
またスタートアップ企業の執行役員として事業計画策定、資金調達を支援。 「財務をデザインし、中小企業の成長をサポートする」ことをミッションに、現場主義・数字で語るコンサルティングを実践。
【プロフィール】

