はじめに
「事業計画もきちんと説明し、熱意も伝えたはずなのに、なぜ融資を断られたのだろう…」
銀行融資に落ちてしまい、「なぜ否決されたのか」「次はどうすれば通るのか」と悩んでいませんか?
実は、融資が通らない多くの原因は、銀行の審査基準や目線を理解していないことにあります。本記事では、元銀行員の視点から「銀行融資が否決される本当の理由」と「次回の審査を通すための具体的な対策」をわかりやすく解説します。さらに、自己診断チェックリストや改善ステップも紹介するので、記事を読み終える頃には「次に取るべき行動」が明確になります。この悔しさをバネに、「ぜひ融資させて下さい」と銀行から言われるような、盤石な経営基盤を築くための一歩を踏み出しましょう。
この記事を読めば、以下の3つが明確になります。
- 銀行員が口にしない「融資否決の本当の理由」
- ご自身の会社の弱点がわかる「自己診断チェックリスト」
- 次回の融資を成功させるための「具体的なアクションプラン」
目次
1. なぜあなたの会社は銀行融資の審査に通らないのか?
「万全の準備をしたはずなのに、なぜ融資を断られたのだろうか…」多くの経営者様がそうお悩みになります。実は、融資審査に通らない原因のほとんどは、準備不足、特に「銀行の目線」を理解していないことにあります。銀行はボランティアではなく、預金者から預かった大切なお金を元手にビジネスをしています。そのため、「儲かっている会社」よりも「確実に返済してくれる会社」にお金を貸したいのです。この記事では、元銀行員の視点から、銀行員が融資を断る本当の理由と、審査の担当者が本当に見ているポイントを具体的に解説します。
1-1. 銀行員が口にする「総合的に判断して…」の本当の意味
1-1-1. 融資を断る際の決まり文句とその裏にある銀行のホンネ
銀行員から「総合的に判断して、今回は見送らせていただきます」と言われた経験はありませんか。これは、銀行員が融資を断る際の決まり文句の一つです。銀行の内部では、融資を断る際には具体的な理由を明言せず、「総合的に判断して」と伝えるよう教育されていることが多いためです。銀行員は、社長を怒らせたり、関係を悪化させたりすることを避けたいという心理も働きます。この言葉を言われたら、そのまま受け取るのではなく、その裏にある本当の理由を探ることが、次の一手につながるのです。
1-1-2. 銀行審査の担当者が本当に見ているポイントとは
銀行員は「総合的に」と言いながらも、必ず具体的な否決理由を持っています。その判断基準は大きく「定量評価」と「定性評価」の2つに分かれます。決算書などの数字で表せる「定量評価」はもちろん重要ですが、それと同じくらい社長の経営姿勢や将来性といった数字に表れない「定性評価」も見ています。特に銀行が最も重視するのは「儲かっているか」以上に「貸したお金をきちんと返せるか」という返済能力です。利益が出ていなくても、手元に潤沢な現預金があれば評価されることもあります。

2. 【元銀行員が明かす】銀行融資の審査に通らない会社に共通する5つの理由
銀行融資の審査に通らないのには、必ず理由があります。銀行員は、融資稟議書という社内書類を作成し、その会社の返済能力や将来性を客観的に評価します。もしあなたの会社が融資を断られたのであれば、その稟議書を上司や本部に通すだけの根拠が足りなかったということです。ここでは、多くの経営者が見落としがちな、融資審査に通らない会社に共通する5つの致命的な理由を、元銀行員の視点から具体的に解説します。
2-1. 理由1:決算書に潜む「銀行審査」のNG項目を放置している
2-1-1. 債務超過・連続赤字は致命的と見なされる
決算書は会社の健康診断書のようなもので、銀行審査における最重要資料です。特に、貸借対照表(B/S)の純資産がマイナスである「債務超過」は、会社の資産をすべて売却しても借金を返済できない状態を意味するため、銀行は致命的な問題と見なします。また、損益計算書(P/L)が「2期連続赤字」の場合も、事業の立て直しが困難であると判断され、新たな融資は極めて難しくなります。
2-1-2. 銀行が嫌う勘定科目(役員貸付金、多すぎる現金など)
銀行員は決算書の中で、特に注意深く見る勘定科目があります。「役員貸付金」です。これは会社のお金が社長個人に流出していることを意味し、公私混同を疑われる大きなマイナスポイントです。また、事業規模に比べて不自然に多額の「現金」が計上されている場合も、その実在性を疑われたり、粉飾決算を隠すための操作ではないかと見られたりすることがあります。
2-1-3. 粉飾決算を疑われるポイントとは
銀行は粉飾決算を非常に警戒しています。特に、前期に比べて売上が急激に増加しているにもかかわらず、利益が伴っていないケースは注意深く見られます。また、売上高に対して売掛金や棚卸資産(在庫)が不自然に多い場合も、架空売上や不良在庫の存在を疑われる原因となります。銀行は必ず過去3期分の決算書を比較し、勘定科目の不自然な動きがないかをチェックしているため、単年度だけ取り繕うことは通用しません。
2-2. 理由2:事業計画書の甘さが原因で「資金調達できない」と判断されている
2-2-1. 根拠のない売上計画と甘い利益予測
事業計画書は、会社の未来の返済能力を示す重要な書類です。しかし、「来期は売上を倍増させます」といった熱意だけの計画では、銀行は評価しません。「なぜ売上が伸びるのか」について、新規取引先の具体的な見込みや市場データなど、客観的な根拠がなければ、それは単なる希望的観測と見なされてしまいます。銀行員が稟議書に書けるような、裏付けのある計画が必要です。
2-2-2. 返済計画が現実的ではない(返済財源が不明確)
銀行が融資の返済財源として最も重視するのは「税引後利益+減価償却費」から生み出されるキャッシュフローです。事業計画書で示す利益計画が、年間の借入返済額を大きく下回っている場合、返済能力がないと判断されます。例えば、年間の返済額が1,000万円なのに、計画上のキャッシュフローが500万円しかなければ、「どうやって返すのですか?」という当然の疑問を持たれてしまいます。
2-2-3. 社長の熱意は伝わるが、客観的なデータが不足している
社長の事業に対する熱意は大切ですが、それだけでは融資審査は通りません。銀行員は、社長から聞いた話を基に、上司や本部を説得するための稟議書を作成しなければなりません。そのためには、「市場規模はこれくらいで、競合のシェアはこうなっており、当社の強みを活かせばこれだけの売上が見込めます」といった、客観的なデータや論理的な説明が不可欠です。感情的な訴えだけでは、稟議書に説得力を持たせることはできません。
2-3. 理由3:資金使途が不明確で、融資の必要性が伝わっていない
2-3-1. なぜ今、その資金が必要なのか説明できていない
銀行は融資したお金が何に使われるかという「資金使途」を非常に重視します。単に「手元資金を厚くしたい」というだけでは、融資の必要性を十分に説明できません。「売上増加に伴い、仕入資金が〇円不足するため」や「新製品開発のための設備投資に〇円必要」など、なぜ「今」、そして「いくら」必要なのかを具体的に示すことが重要です。これが不明確だと、銀行から事業に関係のないことに使われるリスクを懸念されます。
2-3-2. 運転資金と設備資金の区別が曖昧
「運転資金」と「設備資金」は、資金の性質が全く異なります。運転資金は日々の事業活動に必要な短期的な資金ですが、設備資金は機械や建物など長期にわたって使用する資産のための資金です。この区別が曖昧だと、銀行は適切な返済期間を設定できず、返済計画全体を疑います。例えば、10年使う機械の購入資金を、返済期間1年の運転資金で申し込むと、返済能力に無理があると判断され、融資が否決される可能性が高くなります。
2-3-3. 赤字補填などの銀行が納得しにくい資金使途
銀行が最も融資を嫌う資金使途の一つが、過去の赤字を埋めるための「赤字補填資金」です。銀行が貸したいのは、未来の利益を生み出すための前向きな資金です。赤字補填は、ただ穴を埋めるだけで新たな利益を生み出さないため、返済の原資が生まれないと判断されます。もし赤字が出ているのであれば、その原因を分析し、今後の改善策とともに前向きな運転資金として申し込む必要があります。
2-4. 理由4:社長個人の「定性評価」が銀行審査の足を引っ張っている
2-4-1. 銀行への情報開示に消極的だと思われている
銀行との信頼関係は融資の基本です。銀行から試算表や資金繰り表の提出を求められた際に、迅速に対応しなかったり、自社に不利な情報を隠そうとしたりする姿勢は、「何か隠しているのではないか」という不信感につながります。むしろ、自社の弱みや課題を正直に開示し、それに対する改善策を説明する方が、誠実の経営者として評価され、信頼関係が深まります。
2-4-2. 業界動向や自社の弱みを把握していない
銀行員との面談では、自社の強みだけでなく、業界全体の動向や競合の状況、そして自社の弱みについても客観的に話せることが重要です。自社のことしか見えていない社長は、環境変化に対応できないリスクが高いと見なされます。自社の弱みを正確に把握し、その対策を考えていることを示すことで、社長の経営者としての資質が高いと評価されます。
2-4-3. 社長個人の信用情報に問題があるケース
中小企業では会社と社長は一体と見なされるため、社長個人の信用情報も審査に影響します。社長個人が消費者金融から借入をしていたり、クレジットカードの支払いや税金・社会保険料を滞納していたりすると、個人の資金管理能力が低いと判断され、会社の信用力も大きく損なわれます。銀行はこれらの情報を、個人信用情報機関を通じて把握しているため隠すことはできません。。
2-5. 理由5:銀行との関係構築を軽視している
2-5-1. メインバンク1行のみとの取引に依存しているリスク
取引銀行を一行に絞るのは、非常に危険な戦略です。その銀行の支店長が交代した途端に融資方針が変わり、突然融資が受けられなくなるケースは少なくありません。複数の銀行と取引を持つことで、一つの銀行の方針転換によるリスクを分散できます。また、各銀行の対応を比較することで、自社にとって最適な銀行を見極めることにも繋がります。複数行との関係構築を軽視してはいけません。
2-5-2. 融資が必要な時しか銀行に相談しない
資金繰りが苦しくなってから慌てて銀行に駆け込むのは最悪のパターンです。銀行との関係は、業績が良い時こそ深めるべきです。定期的に試算表を持参して業況を報告するなど、普段からコミュニケーションを取っておくことで、銀行側も会社の状況を継続的に把握でき、いざという時に迅速かつ前向きな対応が期待できます。
2-5-3. 複数の銀行を競わせるという戦略がない
複数の銀行と付き合う最大のメリットは、競争原理を働かせられることです。金利や返済期間、担保の有無などの融資条件について、ある銀行の提案を別の銀行に伝えることで、より有利な条件を引き出す交渉が可能になります。1行だけの取引では、銀行側の提示する条件を一方的に受け入れるしかなく、交渉の余地が生まれにくいのが実情です。複数行との関係構築を軽視してはいけません。
| 否決理由 | 説明 |
|---|---|
| 決算書に潜む銀行審査のNG項目 | 債務超過 2期以上の連続赤字 役員貸付金などが多額に計上 |
| 事業計画書の甘さ | 根拠のない売上計画 不明確な返済計画 |
| 資金使途の不明確さ | 資金がなぜ必要か不明確 赤字補填資金を疑われている |
| 社長個人の定性評価の問題 | 自社の強みを把握していない 業界環境、競合他社などを踏まえて、自社を論理的に分析できていない 社長個人の信用力が低い |
| 銀行との関係構築の軽視 | 資金需要以外での銀行員とのコミュニケーション不足 複数行との関係構築を軽視し、取引金融機関が1行しかない |
3. 【融資否決対策】あなたの会社はどこでつまづいた?自己診断チェックリスト
前の章では、銀行が融資審査で否決する5つの主な理由を解説しました。しかし、融資を断られた直後の経営者様は、冷静に自社を分析するのが難しいかもしれません。そこで、客観的に自社の状況を振り返るための「自己診断チェックリスト」をご用意しました。銀行がどの点に懸念を抱いたのか、具体的な原因を特定することが、有効な「融資否決対策」を立てる第一歩です。正直に「はい」「いいえ」で答えてみてください。
3-1. 財務状況チェックリスト
銀行は決算書から会社の財務的な安全性を判断します。特に以下の項目は、返済能力を測る上で致命的な欠点と見なされる可能性があります。
✅貸借対照表(B/S)の純資産はプラスですか?(債務超過ではありませんか?)
債務超過とは、会社の全資産を売却しても借金を返済できない状態です。銀行にとっては最大の危険信号であり、この状態では融資は一段ハードルが高くなります。
✅直近2期連続で赤字になっていませんか?
1期のみの赤字であれば、一時的な要因も考えられます。しかし、2期連続の赤字は、事業の収益構造そのものに問題があり、立て直しが難しいと判断される大きな要因となります。
✅社長個人への貸付金や仮払金など、使途が不明確な支出はありませんか?
会社の資金が事業以外(特に社長個人)に流出していると、銀行は「公私混同」と判断し、経営者の資質を疑います。これは融資した資金が事業に使われないリスクと見なされ、信頼を大きく損ないます。
✅税金や社会保険料の滞納はありませんか?
納税は国民の義務であり、これを滞納していることは、資金繰りが相当悪化している明確な証拠と見なされます。銀行は、税務署より債権回収の順位が低いため、滞納の事実を知ると融資に極めて消極的になります。
✅手元の現預金は、月商の1ヶ月分以上ありますか?
銀行は利益の額以上に、会社がすぐに使える現預金をどれだけ持っているかを重視します。これは会社の「緊急支払い能力」を示す指標であり、不測の事態への対応力を測る上で重要なポイントです。
3-2. 事業計画チェックリスト
事業計画書は、会社の未来の返済能力を銀行に示すための設計図です。ここに説得力がなければ、融資が受けることはできません。
✅売上や利益の計画に、客観的な根拠(取引先の受注見込み、市場データなど)はありますか?
「頑張ります」といった精神論や、単なる希望的観測だけの売上計画は評価されません。なぜ売上が伸び、利益が出るのか、誰が聞いても納得できる具体的な根拠とデータを示すことが不可欠です。
✅計画上の利益(税引後利益+減価償却費)は、年間の借入金返済額を上回っていますか?
これが返済能力の基本です。融資の返済は利益から生まれるキャッシュフローで行われます。計画の段階で返済額が利益を上回っていれば、その計画は破綻していると見なされます。
✅融資の使い道(資金使途)は明確で、事業の成長に直結していますか?
銀行は、融資した資金が会社の成長に繋がり、結果として返済原資を生み出すことを期待しています。赤字の補填や旧債の返済といった後ろ向きな資金使途では、前向きな支援を得ることは難しくなります。
✅最悪の事態(売上が計画通りいかなかった場合など)を想定し、その対策も考えていますか?
楽観的な計画だけでは、リスク管理能力を疑われます。最悪の事態を想定し、それでも事業を継続できる具体的な対策(経費削減策など)を示すことで、経営者の危機管理能力が高いと評価され、銀行は安心します。
3-3. 銀行との関係性チェックリスト
融資はビジネスライクな審査だけでなく、日頃の信頼関係も大きく影響します。良好な関係が築けていれば、いざという時に親身に相談に乗ってくれる可能性が高まります。
✅取引している銀行は複数ありますか?(メインバンク一行に依存していませんか?)
取引が一行だけだと、その銀行の方針次第で会社の資金調達が左右されるため、非常にリスクが高い状態です。複数の銀行と付き合うことで、リスクを分散し、金利や条件面で競争させることも可能になります。
✅融資が必要な時だけでなく、業績が良い時でも定期的に銀行へ業況報告をしていますか?
「困った時の神頼み」のような付き合い方では、信頼関係は築けません。業績が良い時から試算表を持参するなど、定期的に情報提供を行うことで、銀行は会社の状況を継続的に把握でき、いざという時の融資判断がスムーズになります。
✅銀行から依頼された資料は、迅速に提出していますか?
資料提出のスピードは、会社の管理体制や経営者の真摯な姿勢を示す指標と見なされます。迅速な対応は、信頼できるパートナーであることのアピールになります。
✅経理担当者任せにせず、社長自身が銀行の担当者や支店長と直接コミュニケーションを取っていますか?
融資の最終的な責任者は社長です。経理担当者任せにせず、社長自身が会社の未来を自分の言葉で語ることが、銀行の信頼を勝ち取る上で最も重要です。
4. 銀行融資を成功させる次の一手!具体的な「融資否決対策」プラン
融資を断られたことは、決して終わりではありません。むしろ、これまで目を向けてこなかった自社の財務体質や経営戦略を根本から見直す絶好の機会です。自己診断チェックで明らかになった課題を一つひとつ克服していくことで、銀行が「ぜひ応援したい」と思えるような強い会社へと生まれ変わることができます。ここからは、融資否決というピンチをチャンスに変えるための具体的な3つのステップを、元銀行員の視点から徹底的に解説します。
成功事例:弊社デザイムが支援したA社(金属加工業)のケース
<弊社が関与前の状況>
新規取引先からの受注に成功したA社(金属加工業)は、材料の仕入や一部工程の外注費用で売上入金前に20百万円の運転資金が必要となり、銀行に融資申込を行いました。しかし、資金ニーズや根拠を説明しないまま申込をしたため、銀行担当者から「融資の取上げは難しい」と連絡がありました。
<弊社支援の内容>
A社社長の知人であるB氏から紹介を受けた弊社は、A社社長と面談。新規取引先の注文書、仕入/外注/経費明細、6ヶ月の資金繰り実績と予測、今期/来期業績見込など必要な書類とデータをスピード作成し、A社社長も同席の上で銀行に説明、再申込を実施しました。
<結果と現状>
融資再申し込みの結果、20百万円の運転資金について満額融資が実行されました。
その後は、資金需要発生時だけでなく、顧問税理士と協力して月次試算表を早期作成し、毎月銀行担当者と面談。日常的な情報共有を強化し、銀行との信頼関係構築も進行中です。
4-1. ステップ1:銀行が応援したくなる決算書に改善する
4-1-1. まずは債務超過を解消する
銀行審査において「債務超過」は、最も致命的な欠陥と見なされます。これは、会社の全資産を売り払っても借金を返済できない状態であり、銀行から見れば返済能力がないことの証明に他なりません。まずは、この債務超過の解消が最優先課題です。具体的な方法としては、社長個人が会社に貸しているお金(役員借入金)を資本金に振り替える「デット・エクイティ・スワップ(DES)」や、増資などが考えられます。これらの手法で純資産をプラスに転じさせることが、再び融資の交渉テーブルに着くための近道となります。
4-1-2. 節税よりも利益を優先し、純資産を厚くする
多くの中小企業経営者は節税を重視しますが、過度な節税は銀行評価を下げる原因になります。なぜなら、節税のために利益を圧縮すると、会社の体力を示す「純資産」が蓄積されないからです。銀行が最も評価するのは、きちんと利益を出し、納税した上で、会社内部にお金を残している(純資産が厚い)会社です。目先の税金を減らすことよりも、利益をしっかりと計上し、強い財務体質を築くことが、結果として銀行からの大きな信用につながり、将来の資金調達を容易にします。
4-1-3. 銀行に評価されるB/S(貸借対照表)の作り方
銀行は貸借対照表(B/S)を見て、会社の資産と負債のバランスを評価します。評価を高める基本は、「資産の部は、より現金化しやすいものを上に」「負債の部は、返済期限が遠いものを下に」することです。具体的には、使っていない土地や有価証券を売却して現預金を増やす、短期借入金を金利が高くても長期借入金に借り換えて月々の返済を安定させる、といった対策が有効です。これにより、会社の短期的な支払い能力(流動比率)が高まり、銀行は「この会社は資金繰りが安定している」と評価します。
4-2. ステップ2:「なぜ返せるのか」が明確に伝わる事業計画書を作成し直す
4-2-1. 楽観的な計画ではなく、最悪のケースを想定した計画を示す
「売上は必ず伸びます」というような楽観的な事業計画は、銀行に評価されません。むしろ、銀行は常に最悪の事態を想定しています。そこで、経営者自らが「主要な取引先を失った場合」や「売上が計画の7割にとどまった場合」など、最悪のケースを想定した事業計画を提示しましょう。その上で、具体的な経費削減策などを示し、「それでも事業は継続でき、返済も滞りません」と説明できれば、社長のリスク管理能力の高さが評価され、銀行は安心して融資を検討できます。
4-2-2. 銀行の融資審査の8項目を意識してストーリーを組み立てる
銀行員は、融資稟議書を作成する際にチェックすべき8つの項目(①業績財務、②事業計画、③資金使途、④融資条件、⑤返済計画、⑥資金繰り、⑦経営者、⑧銀行取引)に沿って審査を進めます。事業計画書を提出する際は、この8項目について、銀行員が質問する前にこちらから説明するつもりでストーリーを組み立てましょう。銀行員が稟議書を書きやすいように情報を整理して提供することで、審査がスムーズに進み、承認を得られる可能性が格段に高まります。
4-2-3. 自社の弱みを正直に伝え、その対策を盛り込む
自社の弱みや課題を隠そうとすると、かえって銀行に不信感を与えてしまいます。むしろ、「当社の弱みは〇〇ですが、それに対してこのように対策を講じます」と正直に伝えることで、誠実な経営姿勢が評価され、信頼関係が深まります。例えば、「業界全体が厳しい状況ですが、当社は〇〇という新サービスで差別化を図ります」といったように、課題と対策をセットで具体的に説明することが、銀行を味方につけるための重要なポイントです。
4-3. ステップ3:次回の銀行面談に向けた交渉準備とコミュニケーション
4-3-1. 銀行員を味方につけるための情報開示と定期的な接触
融資は、必要な時だけ銀行に頼みに行く「お願い」ではありません。銀行との信頼関係は、日々の地道なコミュニケーションから生まれます。資金需要がない時でも、理想は毎月、少なくとも3ヶ月に1回程度は試算表を基に業況を報告しましょう。定期的に接触し、会社の情報を積極的に開示することで、銀行員はあなたの会社の現状を常に把握でき、いざという時に迅速で前向きな対応が期待できます。この積み重ねが、何よりも強い信頼関係を築くのです。
4-3-2. 銀行側の論理を理解し、Win-Winの関係を提案する
融資交渉は、自社の都合を一方的に押し付ける場ではありません。銀行もまた、金利収入だけでなく、振込手数料や給与振込口座の獲得など、さまざまな収益を求めています。例えば、「今回の融資と合わせて、従業員の給与振込口座を御行にまとめます」といったように、銀行側のメリットも考慮した提案をすることで、交渉は単なる資金の貸し借りから、お互いの利益を追求するWin-Winのビジネスへと変わります。このような姿勢が、銀行を強力なビジネスパートナーに変えるのです。
4-3-3. 複数の銀行と交渉し、競争環境を作る
取引銀行を一行に絞ることは、その銀行の言いなりになるリスクを高めます。必ず複数の銀行と付き合い、同じ条件で融資の相談をしましょう。ある銀行から提示された金利や期間などの条件を、別の銀行に伝えることで、「相見積もり」の状態を作り出します。これにより、銀行間で健全な競争が働き、より有利な条件を引き出すことが可能になります。これは、融資交渉における最も基本的かつ効果的な戦略の一つです。
5. それでも資金調達できない…専門家(中小企業診断士)への経営サポート相談も選択肢に
ここまでにご紹介した対策プランを、日々の経営に追われる社長がすべて独力で実行するのは、決して簡単なことではありません。自社の弱点を客観的に分析し、銀行が納得するレベルの事業計画書を作成するには、専門的な知識と多くの時間が必要です。もし、「自社だけでの改善は難しい」「何から手をつけていいか分からない」と感じているのであれば、専門家の力を借りることも賢明な経営判断です。「餅は餅屋」という通り、資金調達の専門家である弊社のような財務コンサルタントや中小企業診断士に経営サポートを依頼することは、融資成功への確実な近道となり得ます。
5-1. なぜ専門家の経営サポートが必要なのか
経営者は孤独な存在であり、自社の状況を客観的に見つめ直すことは非常に困難です。毎日会社のことを考えているからこそ、問題点に気づきにくくなったり、希望的観測に頼ってしまったりすることがあります。専門家は、第三者の客観的な視点から、社長自身も気づいていない財務上の課題や、事業の潜在的な強みを的確に洗い出します。また、最大のメリットは「銀行の目線」を熟知していることです。銀行員がどのような資料を、どのような論理で評価するのかを知り尽くしているため、審査のツボを押さえた効果的なアピールが可能になります。社長が一人で試行錯誤する貴重な時間を節約し、本来注力すべき事業そのものに集中できる環境を作ることも、専門家の重要な役割です。
5-2. 財務コンサルタント・中小企業診断士に相談するメリット
財務の専門家に相談することで、融資審査の通過率を高めるための具体的なサポートが受けられます。まず、銀行が求める水準の「経営改善計画書」や「資金繰り表」といった説得力のある資料作成を任せることができます。これにより、社長の負担が大幅に軽減されるだけでなく、計画の実現可能性も高まります。次に、銀行との面談に同席してもらうことで、専門的な見地から説明を補強し、銀行からの信頼を格段に高めることができます。社長一人では難しい金利や返済期間などの条件交渉も、専門家が間に入ることで有利に進められる可能性があります。さらに、融資だけでなく、補助金や助成金の活用など、会社の状況に応じた最適な資金調達方法を多角的に提案してもらえる点も大きなメリットです。
5-3. まずは無料相談から一歩を踏み出しましょう
専門家への相談というと、すぐに高額な費用がかかるのではないかと心配されるかもしれません。しかし、多くの財務コンサルティング会社や中小企業診断士は、初回無料の相談に応じています。まずはこの無料相談を活用し、あなたの会社の現状や悩みを話してみてはいかがでしょうか。無料相談では、自社の課題の簡単な整理や、専門家がどのようなサポートを提供できるのかを知ることができます。何より、信頼できるパートナーとなり得る人物かどうか、その相性を見極める絶好の機会です。相談したからといって、契約を強制されることは決してありません。一人で悩み続けるよりも、まずは専門家の意見を聞くことで、必ず次の一手が見えてくるはずです。
6. よくある質問【FAQ】
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銀行融資の審査に落ちた場合、再度申し込むことはできますか?
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はい、可能です。ただし、同じ内容・条件のまま再申し込みしても、審査結果が変わることはほとんどありません。まずは前回の否決理由をきちんと分析し、自社の財務体質や事業計画を見直した上で、改善策を講じてから再申請することが重要です。否決理由を銀行に確認できれば、次回の審査通過率も高まります。
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融資審査の通過率を上げるためには、どのような書類・準備が必要ですか?
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銀行が重視するのは「決算書の健全性」と「具体性のある事業計画書」です。特に、実現可能な売上計画や、具体的な資金使途、返済計画の合理性を客観的データと合わせて説明することがポイントです。また、過去3期分の決算書、資金繰り表、納税証明書なども用意しましょう。
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赤字企業でも銀行融資を受けることはできますか?
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赤字や債務超過の場合でも「信用保証協会の保証付き融資」を活用すれば、銀行融資を受けられる可能性があります。保証協会が債務を保障することで、銀行のリスクが軽減され、審査が柔軟になることが特徴です。赤字理由や改善策を明確にし、保証協会の保証付き融資を申し込むのも有効です。なお、保証協会付き融資の内容や審査基準、利用方法は地域によって異なるため、詳細は各地の信用保証協会の公式FAQや窓口で必ず確認してください。
一般社団法人 全国信用保証協会連合会「よくあるご質問」
https://www.zenshinhoren.or.jp/question/
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社長個人の信用情報はどのくらい審査に影響しますか?
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中小企業の場合、社長個人の信用情報は融資審査に大きく影響します。クレジットカードや税金・社会保険料の滞納、消費者金融からの借入などがあると、会社の信用力も大きく損なわれるため注意が必要です。個人信用情報に問題がある場合は早めの改善が不可欠です。
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複数の銀行と取引するメリットは何ですか?
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主なメリットは、「条件面での交渉力が上がる」「突然の融資打ち切りリスクを分散できる」「銀行間の競争を活用できる」点などです。取引銀行を一行だけに絞るのではなく、複数銀行と良好な関係を築いておくことで、いざという時に資金調達の選択肢が広がります。
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融資目的(資金使途)はどの程度具体的に説明すべきですか?
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「いつ、何のために、いくら必要か」を明確に説明することが求められます。単に「手元資金が不安」「運転資金が必要」ではなく、「新規事業立ち上げのための設備投資」「仕入拡大に伴う運転資金」など、事業の成長や収益アップにつながる具体的な使途を示しましょう。
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どうしても自社だけで改善策を立てるのが難しい場合は?
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専門知識や人的リソースが足りない場合は、財務コンサルタントや中小企業診断士などの専門家に相談することが効果的です。無料相談を活用し、現状分析や事業計画の作成サポート、銀行交渉への同席など、プロの力を借りることで融資成功の可能性が高まります。
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銀行融資に落ちた場合、次に申し込むまでの期間は?
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一般的に、同じ条件で短期間に再申請しても結果は変わりません。最低でも3〜6か月程度は、自社の財務体質や事業計画を見直してから再申請するのが理想です。特に「債務超過の解消」「返済計画の改善」など、銀行が否決理由と判断した点を具体的に改善してから申し込むことで、審査通過率が高まります。
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リスケ中でも融資は受けられるのか?
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銀行融資の返済条件を変更(リスケ)している場合、新規融資は非常に厳しくなります。ただし、経営改善計画を策定し、金融機関や信用保証協会に承認されているケースでは、追加融資が認められる可能性があります。また、リスケの状況でも「日本政策金融公庫」や「自治体制度融資」などを活用できる場合があるため、専門家に相談するのが効果的です。
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銀行以外で資金調達できる方法は?
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銀行融資以外にも、中小企業が利用できる資金調達方法はいくつかあります。代表的なものは以下の通りです。
- ファクタリング(売掛金を早期現金化)
- ビジネスローン(条件次第で活用可能)
- 補助金・助成金(返済不要の資金調達)
ただし、銀行以外の手段はコストが高くなる場合もあるため、目的に応じて慎重に選択することが重要です。
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[執筆者]
合同会社デザイム 代表社員 水町 新
経営コンサルタント/中小企業診断士
三重銀行(現三十三銀行)での法人融資に従事後、コンサルティング会社へ転職。累計100社超の事業計画の策定実績あり。
またスタートアップ企業の執行役員として事業計画策定、資金調達を支援。 「財務をデザインし、中小企業の成長をサポートする」ことをミッションに、現場主義・数字で語るコンサルティングを実践。
【プロフィール】

