この記事で分かること

補助金審査で採択率を上げる最大のポイントは、公募要領の目的に沿った「首尾一貫したストーリー」と、根拠のある「正確な数値計画」を作ることです。

本記事では、中小企業診断士&プロのコンサルタントの視点から、審査員を納得させる事業計画書の書き方と、絶対につまずいてはいけない数値計画のトラップについて解説します。

こんにちは!合同会社デザイムの近藤です。 三重県をはじめとする東海地方の中小企業様に向けて、補助金活用のポイントをお伝えしています。

以前、補助金申請の「事前準備」について解説しましたが、今回は最も重要な「事業計画書の執筆編」です。
賃上げ率や加点項目の取得も大切ですが、審査の合否を決定づけるコア(中核)は間違いなく事業計画書です。審査員が「どこを見ているのか」をプロのコンサルタントの視点から解説します。

目次

1.そもそも「事業計画書」には何を書くの?

1-1. 事業計画書に書くことは?(ただの「お買い物リスト」ではありません)

  • 審査員は貴社のことを全く知らない第三者。「誰にでも伝わる言葉」で書くことが大前提
  • 「現状の課題」→「解決策(設備投資)」→「将来の利益」の繋がりを証明する資料である
  • 「機械が古くなったから」「とにかく儲けたいから」という自社本位の理由は即不採択に繋がる

東海地方の企業様は、長年培ってきた素晴らしい技術力や、地元に根付いた手厚いサービスをお持ちです。だからこそ、「うちの工場を見てもらえば技術力の高さはわかるはず」「口で説明すれば伝わる」と思われる経営者様も少なくありません。しかし、補助金審査においてはそのスタンスは通用しません。
事業計画書とは、国や自治体に対して「当社は補助金を使ってこんな前向きな挑戦をし、地域経済にも貢献します」と宣言するためのプレゼン資料です。審査員は現場を見に来てはくれませんし、貴社の業界の専門家とも限りません。画面に表示された文字情報だけで、「この会社に税金を投入する価値があるか」をシビアに判定します。
そのため、単に「機械が古くなったから買い替えたい」「人手不足だからシステムを入れたい」といった単なる「お買い物リスト」や「自社の願望」を書くだけでは、絶対に審査には合格しないのです。

【具体例】「小規模事業者持続化補助金」では何を書かされるのか?

具体的に何をどこまで書く必要があるのか、ポピュラーな「小規模事業者持続化補助金」の電子申請画面(公募要領マニュアル)を例に見てみましょう。
大きく分けて「自社の現状(経営計画)」と「今回やること(補助事業計画)」の2つのブロックに分かれています。

参考:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠> 申請システム操作手引き 第19回公募申請(商工会地区)

① <経営計画> まずは「自社の棚卸し」からスタート

いきなり「〇〇という機械を買いたい」と書く欄はありません。まずは審査員に自社を知ってもらい、市場の客観的な事実を伝える項目が続きます。

企業概要: どんな商品を、誰に、いくらで売っているか。
顧客ニーズと市場の動向: お客様は何を求めているか。競合他社はどう動いているか。市場規模はいくらなのかを公的機関のデータやフェルミ推定を用いて示す。
(NG例) 「とにかく良いものを作れば売れる」
(良い例) 「地元の自動車産業はEV化で既存部品の需要減少が見込まれる一方、アウトドア市場は年5%以上拡大傾向にあり、頑丈な金属製品へのニーズが高まっている。さらに名古屋市でのアウトドア用金属食器の需要は年2億円程度あると推定され、より高価でオリジナリティのある食器の販売が伸びている」

自社の強み: 他社にはない武器(選ばれる理由)は何か。
(例) 「長年の下請けで培った、ミクロン単位の金属加工技術と不良品率の低さ」

経営方針・目標と今後のプラン: その強みを活かして、会社をどうしていきたいか。

② <補助事業計画> 補助金を使って「どう付加価値を得るか」

自社の現状を伝えた上で、ここでようやく今回のメインテーマを書きます。

補助事業名(30文字以内): パッと見て何をするか分かるキャッチコピー。
(例) 「下請け加工技術を活かした、プロ向けアウトドア用品の開発と直販」

販路開拓等(または業務効率化)の取組内容: 具体的に何を買って、どうやって売るのか。「誰に・何を・どのように」を具体的に書きます。
(例) 「〇〇という最新設備を導入し、自社ブランドのチタン製ペグを製造。インスタグラム広告と、名古屋で開催される〇〇展示会に出展してキャンパーへ直接販売する」

補助事業の効果: この取り組みによって、結果として売上や利益がどう上がるのか。

いかがでしょうか。
「機械を買う」こと自体はあくまで手段にすぎません。審査員が見たいのは、その前後の「なぜその投資が必要なのか(背景)」と「買った後、どうやって稼ぐのか(未来)」のストーリーが論理的に繋がっているかどうかなのです。
事業計画書とは、国や自治体に対して「当社は補助金を使ってこんな前向きな取り組みをします」と宣言するためのプレゼン資料です。単に「古くなったから新しい機械が欲しい」「儲けたいから資金が欲しい」といった理由では、絶対に審査には合格しません。
また、補助金の種類によって提出する様式が異なります。

1-2. 事業計画書の様式は?(「どう見せるか」が勝負の分かれ目)

  • 補助金によって指定されるフォーマット(テキスト入力か、スライド形式か)は全く異なる
  • 「電子申請(テキスト)」は、文字の羅列にならないよう【】や箇条書きで読みやすくする工夫が必須
  • 「パワーポイント形式」は、現場の写真や図解をふんだんに使い、視覚的にアピールする構成力が求められる

「よし、自社の強みとやるべきことは整理できた。あとは所定の用紙に書き込むだけだ!」と思われるかもしれませんが、ここで一つ大きな壁が立ちはだかります。実は、補助金の種類によって提出を求められる事業計画書の「様式(フォーマット)」が全く異なるのです。

種類(補助金名、回)申請様式申請の特徴
小規模事業者持続化補助金
(第19回公募)
電子申請(システム画面への直接入力)電子申請システムに直接「経営計画」や「補助事業計画」の文章を入力していく形式です。申請前に地域の商工会・商工会議所の支援(面談等)を受け、内容を確認された上で「事業支援計画書」の発行・添付を受けるプロセスが必須となるのが大きな特徴です。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 
(第23次公募)
電子申請(システム入力 + PDF添付)本文はシステム画面に直接入力し、その補足となる図や画像などをA4サイズ5ページ以内のPDFにまとめて添付・連携させる構成力が求められます。
デジタル化・AI導入補助金2026 (通常枠)電子申請(システム入力)申請者単独ではなく、IT導入支援事業者と共同で作成します。支援事業者がシステム上で事業計画やITツール情報を入力し、申請者が「申請マイページ」上で内容を確認・宣誓して提出する流れが特徴です。
中小企業省力化投資補助事業(一般型) (第6回公募)電子申請(PDF形式ファイルの添付等)提供されるひな形を参考に、A4サイズで可能な限り簡潔に事業計画書を作成しPDF等で添付します。省力化指数、投資回収期間、付加価値額などの明確な数値根拠の提示が求められます。
中小企業成長加速化補助金 (2次公募)電子申請(最大40ページのPDF + エクセル添付)最大40ページの投資計画書(PDF形式)に加え、別紙やローカルベンチマーク(エクセル形式)の作成が必要です。また、書面審査を通過した後は、経営者自身によるプレゼンテーション審査(口頭審査)が実施されるのが最大の特徴です。
中小企業新事業進出促進補助金 (第3回)電子申請(システム画面への直接入力)テンプレートを用いて事前準備を行い、システムへ直接入力していく形式です(各項目に写真・図表等の貼り付けも可能)。既存事業と新規事業の相違点(製品・市場の新規性など)を明確に比較・分析して記載することが強く求められます。

様式が違えば、審査員に対する「見せ方(プレゼン手法)」もガラリと変える必要があります。代表的な2つのパターンを見てみましょう。

小規模事業者持続化補助金などの「電子申請(テキスト入力)型」

現在、多くの補助金が「j Grants」などの電子申請システムに移行しています。この場合、システムの画面上にある四角い入力フォームに、直接文章を打ち込んでいくスタイルが主流です(※一部PDFファイル等を添付する形式もあります)。

ここで職人気質な経営者様がよく陥る罠が、「熱意のあまり、改行のない文字の塊(ベタ打ち)を作ってしまうこと」です。 審査員は、パソコンの画面上で何十件もの計画書を読みます。専門用語が詰まった真っ黒なテキストの塊を見ると、それだけで読む気を無くしてしまいます。テキスト入力しかできない様式だからこそ、適度に改行を入れたり、【当社の強み】<ターゲット顧客層>のように記号を使って見出しを作り、「パッと見の読みやすさ」を演出する文章力が問われます。

中小企業成長加速化補助金などの「パワーポイント(スライド)型」

一方で、数千万円から億円単位の大きな投資を支援するような補助金(成長加速化補助金など)では、ワードではなくパワーポイントを用いたスライド作成が求められるケースがあります。
この様式で「文字ばかりのスライド」を作るのは絶対にNGです。パワーポイントを指定されているということは、「視覚的なプレゼンテーション」が求められている証拠です。

【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

 モノづくりが盛んな東海地方の企業様にとって、このパワーポイント形式は自社の技術力をアピールする最大のチャンスです。言葉で「当社の切削加工は他社より高精度です」と書くよりも、実際に加工した「ピカピカの製品写真」や、整然と管理された「工場の現場風景」、導入予定の機械がどこに置かれるかを示す「図面(レイアウト図)」をスライドに1枚貼り付けるだけで、審査員への説得力は10倍になります。
また、ターゲット市場の規模などは「右肩上がりのグラフ」で示すなど、目で見て直感的に理解できる計画書を作り込むことが採択への近道となります。

1-3. 事業計画書には「別紙」がある(熱意を数字で証明できますか?)

  • 事業計画書は文章(定性)だけでなく、エクセル等の「別紙(定量)」とセットで審査される
  • 代表的な別紙には、将来の「収支計画書」や、設備の「省力化計算ファイル」などがある
  • 売上目標や賃上げ計画などの「数値計画」が、審査におけるシビアな『定量的評価』に直結する

事業計画書の文章(ワードやパワーポイント等)を一生懸命書き上げて、「よし、自社の熱意と強みは完璧に伝わるはずだ!」と一息つきたくなるお気持ちはよく分かります。しかし、補助金申請にはもう一つ、絶対に避けては通れない大きな関門があります。それが「別紙」の存在です。
多くの補助金では、文章で書いた計画を数字で裏付けるために、指定されたエクセルファイル等で「別紙」を作成し、添付することが義務付けられています。どのような別紙が必要になるのか、代表的な例は以下の表にまとめましたのでご覧ください。

補助金名別紙の種類目的の内容審査におけるポイント
中小企業成長加速化補助金投資計画書別紙 (様式2_エクセル形式)確定した決算資料や本文の投資計画書(様式1)に記載された数値と平仄を合わせた、定量的な数値計画を作成するため。高い売上高成長率や付加価値増加率が示されているか。また、創出された利益を従業員へ還元する賃上げ計画が具体的・妥当かつ持続的か等、定量面での効果と実現可能性。
ローカルベンチマーク (様式3_エクセル形式)自社の財務状況を分析するため(指定フォーマットの“【入力】財務分析”シートの黄色セルに必要事項を記入)。ローカルベンチマークによるスコアリングを通じて、補助事業を適切に遂行できる財務状況が十分に確保されているか。
中小企業省力化投資補助事業(一般型)事業計画書(その3) (指定様式)会社全体の事業計画における「労働生産性」「省力化指数」「投資回収期間」「付加価値額」等を算出し、その算出根拠と目標数値を提示するため。「省力化指数」が高い取組か、「投資回収期間」が短い取組か、「付加価値額」の年平均成長率が大きい案件か等の観点において、その記載内容や算出根拠が妥当なものとなっているか。
1人当たり給与支給総額の確認書 (指定様式)応募申請時の1人当たり給与支給総額を算出し、賃上げ目標(年平均成長率+3.5%以上増加など)の基準となる数値を確認するため。補助事業の実施による会社全体への波及効果を踏まえ、「1人当たり給与支給総額」等の算出根拠に妥当性があるか。
中小企業新事業進出促進補助金収益計画表 (事業計画書内等)補助事業の成果の事業化見込み(目標時期・売上規模等)や、各要件(新事業売上高、付加価値額、賃上げ等)を満たすための収益計画を算出根拠とともに作成するため。補助事業により高い付加価値の創出や賃上げを実現する目標値が設定され、かつ実現可能性が高い事業計画となっているか。大規模な賃上げ計画の算出根拠が妥当であり、継続的か。
デジタル化・AI導入補助金賃金状況報告シート (指定様式)補助率の引上げ要件や審査の加点要件となる「最低賃金以上の従業員割合」や「事業場内最低賃金の引き上げ状況」等を示すため。国の推進する政策や賃金引上げに取り組んでいるか等、要件・加点条件を満たしているかどうかの確認。
【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

審査員は、事業計画書の文章から伝わる「熱意やストーリー(定性的な評価)」を読む一方で、別紙のエクセルに並んだ数字を見て「その熱意は、ビジネスとして本当に成立するのか?(定量的な評価)」を極めて冷静にジャッジしています。
東海地方のモノづくり企業様は、日々の部品の原価計算などは非常に緻密に行われている一方で、いざ「3年後、5年後の売上目標や賃上げ計画」を作ろうとすると、「だいたいこれくらい売れるだろう」と、どんぶり勘定(えいやっ!)で数字を入れてしまうケースが散見されます。

しかし、別紙に入力する「売上目標」「付加価値額の増加率」「賃上げ率」といった数値は、単なる努力目標ではありません。これらは審査における『定量的な評価基準』そのものです。 例えば、「当社の強みを活かして売上を倍増させます!」と熱い文章を書いていても、別紙の収支計画で「人件費や経費の計算が合っていない」「導入する機械の生産能力を超えた、物理的に不可能な売上目標になっている」といった矛盾があれば、一発で「実現不可能な計画だ」と見なされ、不採択になってしまいます。

また、近年の補助金は「給与総額を年率〇%以上アップさせること」といった要件が厳しく設定されています。この「賃上げ計画」の数字が規定に1円でも届いていなければ、いくら文章が素晴らしくても審査対象外となってしまいます。 文章で語った「夢(ストーリー)」を、別紙のエクセルで「現実(数値計画)」として証明する。この両輪が揃って初めて、補助金に採択される事業計画書が完成するのです。

2. 審査員を納得させる事業計画の「ストーリー」とは?

  • 「なぜ補助金が必要か」という自社の将来像(3年・5年・10年後)を明確にする
  • 審査員は大量の計画書を読んでいるため、写真や図表を使って「パッと見の分かりやすさ」を意識する
  • 公募要領の「目的」に沿った、自社の強みを活かすストーリー展開にする

事業計画書を書く前に、絶対に知っておくべき大前提があります。それは、「審査員は限られた時間の中で、何十件、何百件もの計画書を読んでいる」ということです。
東海地方の中小企業様は、全国的に見ても「真面目で技術力が高い」「現場力が強い」という素晴らしい特徴があります。しかし、いざ事業計画書を書くとなると、その真面目さが裏目に出てしまい、「自社にしか通じない専門用語(業界用語)のオンパレード」「文字がページいっぱいにぎっしり詰まった、まるで分厚い取扱説明書のような計画書」になってしまうケースが非常に多いのです。
審査員は、必ずしも業界のプロや技術者ではありません。文字ばかりの難解な文章は、それだけで読む側を疲れさせ、評価を大きく下げてしまいます。

限られた審査時間の中で「なるほど、この会社はこういう強みがあって、だからこの投資が必要で、将来はこうやって稼いでいくのか」と、流れるように理解できる「首尾一貫したストーリー」になっているかどうかが、採択と不採択の明確な境界線になります。
パッと見てスッと頭に入ってくる、そして審査員を「この会社を応援したい!」とワクワクさせるようなストーリーを作るために、ここから解説するポイントを必ず押さえていきましょう。

2-1 なぜ補助金を活用したいのかを明確にする(「単なる買い替え」は通用しません)

  • 補助金は「古くなった機械の買い替え」ではなく、「企業の成長・変革」に対する投資である
  • 3年後、5年後、10年後の「自社のありたい姿」から逆算して、今回の設備投資を位置づける
  • 「自動車産業の構造変化」など、自社を取り巻く環境を踏まえたビジョンが審査員の共感を呼ぶ

まずは、補助金を活用して「自社が将来どのような方向に進んでいくのか」というビジョンを明確にします。
目先の「今、この設備が欲しい」という短期的な視点だけでなく、3年後、5年後、10年後に会社をどう成長させたいのかという中長期的な将来像を土台に据えましょう。

【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

私たちがご相談を受ける中で、最も多いご要望が「20年使った機械がいよいよ寿命なので、補助金で最新機種に買い替えたい」というものです。長年、堅実に現場を守り抜いてこられた東海地方のモノづくり企業様にとって、非常に切実な問題です。
しかし、補助金の世界では「単なる設備の更新」は、原則として不採択の対象となります。
なぜなら、補助金の原資は「税金」だからです。国や自治体は「現状維持」に税金を投入することはできません。その設備を導入することで、企業が大きく成長し、利益を生み、賃上げを行い、ひいては地域の経済を牽引してくれるという「リターン」を求めているのです。

だからこそ、設備機器のカタログを開く前に、まずは「自社の将来像(ビジョン)」を言語化する必要があります。

  • (NGな理由) 「今の旋盤が壊れそうだから、新しい旋盤を買って、今まで通りの部品を作り続けたい」
  • (評価されるビジョン) 「地元・東海地方の自動車産業がEV化へと急激にシフトする中、10年後を見据えて『医療機器向け部品』という第2の収益の柱を立ち上げたい。その第一歩として、既存の技術を応用できる〇〇という最新設備を導入し、3年後までに新たな市場へ参入する」

このように、「10年後の大きなビジョン」があり、それを実現するための「3年後のマイルストーン(中間目標)」として今回の補助金(設備投資)がある、という位置づけにすることで、計画書の説得力は何倍にも跳ね上がります。

2-2. 公募要領の「目的」に沿って書く(★最重要・ここが合否を分けます)

  • 公募要領が発表されたら、真っ先に読むべきは「対象経費」ではなく1ページ目の「目的」
  • 補助金は「国や自治体が抱える社会課題(政策)を解決するためのツール」である
  • 「自社のやりたいこと」と「国が求めていること」の方向性をピッタリと一致させる

繰り返しになりますが、「新しい機械を買いたいから補助金がほしい」という自社本位のアピールはNGです。補助金は国や自治体の政策(税金)で行われているため、「その補助金が設定された目的」に合致した計画でなければ、どんなに素晴らしい事業であっても採択されません。

【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

新しい補助金の公募要領(ルールブック)が発表されたとき、経営者の皆様は真っ先にどのページを開くでしょうか? 多くの方が、「うちが買いたい機械は対象経費に入っているかな?」「いくらまで補助されるのかな?」と、後ろの方のページにある金額や条件のリストを探しにいきます。実は、これが不採択へと繋がる第一歩なのです。
コンサルタントの我々が真っ先に、そして穴が開くほど読み込むのは、公募要領の「1ページ目」に書かれている『事業の目的』です。
国や自治体は、ただ中小企業にお金を配りたいわけではありません。「少子高齢化による人手不足」「長引く物価高」「地方経済の衰退」といった、国として解決したい大きな課題を持っています。 つまり補助金とは、「国が抱える課題の解決に協力してくれる企業に対して、その見返り(投資)として資金を提供する制度」なのです。
愛知・岐阜・三重を中心とする東海地方には、確かな技術力で独自の製品を生み出す力強い企業様が多数いらっしゃいます。しかし、その「自社の強み」を単にアピールするだけでは不十分です。

  • 国が「地域経済への波及」を求めている補助金なら、「自社だけでなく、地元のサプライチェーン全体を巻き込んで利益を上げる計画」を書く。
  • 国が「人手不足の解消」を求めている補助金なら、「新しい機械を入れることで作業時間を半分にし、浮いた人員をより付加価値の高い営業部門へ回す計画」を書く。

このように、「国が求めているゴール(目的)」に対して、「当社の事業計画がまさにその解決策になりますよ」と、首尾一貫したストーリーで答えること。これが、審査員を最も深く納得させる、いわば「採択のポイント」なのです。
各補助金がどのような目的を持って設定されているのか、代表的な例を表にまとめましたのでご覧ください。この目的の「キーワード」を、事業計画書の随所に散りばめることが極めて重要です。

補助金名事業の目的
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金中小企業・小規模事業者が相次ぐ制度変更に対応するため、生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を行うために必要な設備投資等を支援し、生産性向上を促進し経済活性化を実現すること。
デジタル化・AI導入補助金(通常枠)中小企業・小規模事業者等が制度変更(働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイスの導入等)に対応するため、生産性向上に資するITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入する経費を補助し、生産性向上を図ること。
中小企業省力化投資補助事業(一般型)人手不足に悩む中小企業等が、売上拡大や生産性向上を後押しするため、IoT・ロボット等の人手不足解消に効果があるデジタル技術等を活用した専用設備を導入する経費を補助し、省力化投資を促進して付加価値額や生産性向上を図るとともに、賃上げにつなげること。
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>小規模事業者等が制度変更(物価高騰、賃上げ、インボイス制度の導入等)に対応するため、自ら策定した経営計画に基づく販路開拓等の取組や、それと併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援し、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ること。
中小企業成長加速化補助金中小企業の「稼ぐ力」を底上げし、地域にインパクトのある成長企業を創出するという観点から、将来の売上高100億円を目指して、大胆な投資を進めようとする中小企業の取組を支援すること。
中小企業新事業進出促進補助金中小企業等が行う既存事業と異なる事業への前向きな挑戦であって、新市場・高付加価値事業への進出を後押しすることで、企業規模の拡大付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくこと。

2-3. 写真や図を活用して視覚的にアピールする(百聞は一見に如かず)

  • 「文字だけの計画書」は審査員を疲れさせるため、視覚的なオアシスを作る
  • 職人の技術や5Sの行き届いた現場は、言葉よりも「写真1枚」が圧倒的に伝わる
  • 市場の成長性や売上目標は、数字の羅列ではなく「右肩上がりのグラフ」にする

自社の強みである「こだわりの製品」や「工場の様子」は、言葉で長々と説明するよりも写真を1枚貼る方が圧倒的に伝わります。

特にモノづくり企業が多い東海地方では、「ミクロン単位の精緻な加工技術」や「5Sが徹底された美しい現場」など、文字だけでは凄さが伝わりにくい強みがたくさんあります。これらは、百の言葉を並べるよりも、現場のリアルな写真をポンと載せるのが一番の近道です。

また、ターゲット市場の規模(伸びている市場であること)や今後の売上推移などは、エクセルの表をそのまま載せるのではなく、グラフ(図表)を用いて視覚的にアピールしましょう。疲れ切った審査員の目を引きつける、最高のアピール材料になります。

2-4 首尾一貫した「ストーリー」とは?(SWOTの活用)

  • 計画書は「点の思いつきの羅列」ではなく、現状から未来へ繋がる「線(物語)」にする
  • 「自社のやりたいこと」だけでは不十分。審査員を納得させる論理的な繋がりが必要
  • 経営戦略の基本「SWOT分析」を補助金向けにアレンジした4つの要素を盛り込む

東海地方の意欲的な経営者様とお話ししていると、「この技術を使ってアレもやりたい」「新しい設備でコレもできそうだ」と、素晴らしいアイデアが次々と溢れてきます。しかし、そのアイデアをそのまま事業計画書に箇条書きで並べても、第三者である審査員には「思いつきの羅列(点)」にしか見えません。
事業計画書は、自社の現状(今まで何をしてきたか)から将来像(これからどう稼ぐか)までが、全く矛盾なくスムーズに繋がる「一本のストーリー」になっている必要があります。

「なるほど、この会社にはこういう歴史があり、今はこういう課題を抱えている。だからこそ今回の補助金でこの設備を導入し、最終的にこういうビジョンを実現するのか」と、審査員がまるで一つのドキュメンタリー番組を見ているかのように深く納得する展開が理想です。
この「首尾一貫したストーリー」をブレずに構築するために、経営戦略の基本フレームワークである「SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)」を補助金向けにアレンジした、以下の4つの要素(社会性・強み・弱みの克服・機会)を必ず盛り込んでいきましょう。

ストーリー①:社会性があるか(なぜ国が貴社を応援すべきなのか?)

  • 補助金は「税金」であるため、自社の利益だけでなく「社会課題の解決」への貢献が問われる
  • 環境配慮(SDGs)、地域(地方)の活性化、雇用の創出、女性活躍などが強力なキーワード
  • 東海地方ならではの「地場産業のサプライチェーン維持」なども立派な社会性になる

補助金を活用して購入した設備を使って、自社が儲かるだけでなく「社会や地域に貢献できる事業であること」を示すのがストーリーの第一歩です。
なぜなら、補助金の原資は皆様が納めた「税金」だからです。審査員(国や自治体)の立場になって考えてみてください。「この最新機械を買えば、うちの会社が楽をして儲かります!」とだけ書かれている計画書に、大切な税金を投入して応援したいと思うでしょうか? 答えはNOです。
国や自治体は、自らが抱える社会課題を一緒に解決してくれるパートナー企業を探しています。そのため、「環境への配慮(省エネや廃棄物削減)」「福祉」「地域の活性化」「地方での新たな雇用創出」「女性や高齢者の活躍」といったキーワードが盛り込まれた事業は、現在の審査トレンドとして非常に高く評価されます。

【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

「うちみたいな小さな町工場に、社会課題の解決なんて大それたことは書けないよ」と思われるかもしれません。しかし、難しく考える必要はありません。 例えば、岐阜県や三重県の過疎化が進む地域において、「新たな事業を立ち上げることで、地元の若者や女性を2名新規雇用する」というのは極めて立派な社会貢献です。また、「新しい設備で騒音や振動を減らし、周辺の住環境に配慮する」ことや、「当社の特殊な加工技術を次世代に継承し、東海地方のモノづくりサプライチェーンの空洞化を防ぐ」というのも、力強い社会性のアピールになります。 自社の事業が、地域社会のどんな役に立つのか。この視点を一つ加えるだけで、計画書の「品格」がグッと上がります。

ストーリー②:会社の「強み」が活かされているか(なぜ、貴社がやるべきなのか?)

  • 「なぜ他社ではなく、自社がその事業をやるのか?」に対する明確な答えが『強み』である
  • 既存事業で培った技術やノウハウと無関係な新規事業は、「失敗リスクが高い」と判断される
  • 自社の強み(武器)を、今までとは違う市場(戦場)でどう活かすかが採択の鍵を握る

既存事業で培った「自社ならではの強み」を活かしたビジネス展開ができるかどうかが、審査における最大の評価ポイントの一つです。
審査員が事業計画書を読みながら、常に頭に浮かべている厳しい疑問があります。それは、「なぜ、他社ではなく御社がこの事業をやるのか?」「大企業や既存の競合他社に勝てる根拠はどこにあるのか?」ということです。

ここで経営者様が陥りがちなNGパターンの代表が、既存事業とのシナジー(相乗効果)が全くない異分野への進出です。

例えば、東海地方で長年「自動車部品の下請け100%」でやってきた金属加工企業が、「これからは飲食の時代で儲かりそうだから」という理由で、いきなり駅前で個人客向けの居酒屋を始めるとすると、審査員はどう思うでしょうか。「全くの未経験業種で、今までの強み(精密加工技術や生産管理ノウハウ)が何も活きていない。これでは競合に勝てる見込みがなく、貴重な税金を投入しても失敗するリスクが高すぎる」と判断し、容赦なく不採択の烙印を押します。

【評価される良いストーリーの例(強みの横展開)】

逆に、同じ自動車部品の金属加工企業が、そのミクロン単位の精密な切削技術や熱処理のノウハウ(強み)を最大限に活かして、「プロの料理人向けの、熱伝導率が極めて高く焦げ付かない高級・鉄製フライパンを開発・直販する」という計画ならどうでしょうか。
これなら、「なるほど!長年厳しい自動車業界の品質要求に応え続けてきたその技術力があるなら、他社には真似できない圧倒的に素晴らしい調理器具が作れそうだ」と、審査員を深く納得させ、ワクワクさせることができます。
自社が当たり前だと思っている技術やノウハウ(強み)を、別のお客様(新しい市場)に向けてどう活かすか。これが、説得力のある事業計画の基本であり、最も美しいストーリー展開なのです。

ストーリー③:補助事業の「弱み」を克服する方法を考えているか(ここが合否の分かれ目!)

  • 計画書に「自社の良いこと(強み)」しか書かないのは、逆に審査員の不信感を招く
  • 新しい市場への挑戦には必ず「弱み(販路や知名度のなさ等)」が伴うことを自覚する
  • 弱みをごまかさず、「具体的な固有名詞」を出してどう克服するかの戦略を書く企業が勝つ

多くの経営者様が、事業計画書には「自社の素晴らしいところ(強み)」ばかりを書きたがります。自社をアピールする場ですので当然のお気持ちですが、新しい事業に挑戦する以上、必ず自社には足りないもの、つまり「弱み」が存在するはずです。
審査員は、計画書を読みながら「この計画の弱点(リスク)はどこか?」を常に探しています。
もし弱みが一切書かれていなければ、「この経営者は、新規事業のリスクを客観的に分析できていない」と判断され、かえって評価を落としてしまいます。弱みを隠さず明記し、それをどう克服する気なのかをシビアに伝えることが、実は最大の信頼に繋がるのです。

【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

東海地方のモノづくり企業様が新しい自社製品を開発する際、圧倒的に不足している弱みが「新しい業界への販路(コネクション)」と「マーケティング力(売り方)」です。
先の鉄製フライパンの例で言えば、「今まで自動車メーカー(BtoB)からの受注生産しかやってこなかったため、一般消費者やプロの料理人に売るための『販路』や『営業ノウハウ』が全くない」という致命的な弱みがあります。

これを計画書でどう克服するかが、合否を分ける最大のポイントです。

  • (NGな克服法) 「ホームページを新しく作って売ります」「SNSで情報発信して営業を頑張ります」
    → 誰でも書けるフワッとした言葉です。「作っただけで売れるほど甘くない」と審査員に見透かされます。
  • (評価される克服法) 「自社には飲食業界への販路がない。これを克服するため、来年〇月に名古屋市のポートメッセなごや(または大阪市)で開かれる、東海エリア最大のプロの料理人向け厨房機器展示会『〇〇展』に出展する。そこで直接実演販売を行い、初期の顧客リスト〇〇件を獲得して販路を開拓する」

このように、「具体的な固有名詞(展示会名や協業するパートナー企業名など)」を出してアプローチ方法を記載してください。「あ、この会社は弱みを自覚した上で、もう具体的なアクションまで考えて準備しているんだな」と、審査員を深く安心させることができます。

ストーリー④:機会(ニーズ)をつかむ事業か(誰がそれを欲しがっているのか?)

  • どんなに良い製品でも、市場のニーズ(機会)がなければビジネスとして成立しない
  • 「世の中に必要とされている」ことを、客観的なデータや外部環境の変化で証明する
  • 自社が実際に戦う「商圏(ビジネスエリア)」のリアルな動向を捉えることが重要

最後に、その事業が「世の中のニーズ」に合致しているかを示す必要があります。どんなに素晴らしい製品やサービスを作っても、買う人がいなければ売上はゼロです。外部環境をしっかりと調べ、「なぜ今、この事業をやるべきなのか」を示しましょう。

【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

「日本全国どこでも売れます」といった大きすぎる風呂敷を広げるよりも、自社が実際にビジネスを行う「商圏エリア」のリアルな動向を捉えた戦略が審査員には響きます。
例えば、「円安の影響で増加するインバウンド(訪日外国人)客は、日本の高品質な商品を求めている。この機会を捉え、中部国際空港や名古屋駅周辺、飛騨高山などの主要観光地のお土産店にターゲットを絞って販売する」といった具体的な戦略です。
「誰がそれを欲しがっているのか」をエリアを絞って明確にすることで、ただの思いつきではなく、勝算のある確かなストーリーだと証明することができます。

2-5 よく言われる「付加価値」ってなに?(魔法の言葉ではありません、計算式です)

  • 補助金における「付加価値」とはフワッとした概念ではなく、厳格な計算式である
  • 計算式は【 営業利益 + 人件費 + 減価償却費 】。この数値を計画的に増やす必要がある
  • 「設備投資をして、利益を出し、雇用や賃上げで還元する」という成長サイクルを描く

公募要領を読んでいると、必ずと言っていいほど「付加価値額の向上」という言葉が頻出します。「当社の製品はまごころ込めているから付加価値が高い!」と言いたくなるお気持ちは分かりますが、補助金の世界では、付加価値とはフワッとした概念(魔法の言葉)ではありません。明確な「計算式」が存在します。
一般的な補助金における付加価値額の計算式は、以下の通りです。

付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費

この数式が持つ意味合いとしては、「企業が事業活動によって新たに生み出した価値」を指します。

【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

この計算式を分解すると、補助金審査において国が中小企業に求めている「3つのアクション」が明確に見えてきます。事業計画書では、以下の3つをどう実現するのかを具体的に書く必要があります。

  1. 売上をアップさせて利益もアップさせる(営業利益の増加)
    新しい設備を使って生産性を劇的に高めたり、自社の強みを活かした新商品を開発して単価を上げたりすることで、しっかりと本業で稼ぐ(=営業利益を出す)ことが求められます。
  2. 事業拡大で人の雇用を増やし、給与を上げる(人件費の増加)
    儲かった利益を会社に貯め込むのではなく、事業拡大に伴う新たな人材の雇用や、既存の従業員への「賃上げ」という形で、人に投資して還元することが求められています。
  3. 積極的に設備投資をする(減価償却費の増加)
    古い機械をだましだまし使うのではなく、補助金というチャンスを活かして最新設備に大胆に投資し、未来に向けた強固な土台作り(=減価償却費の計上)を行う企業が評価されます。

つまり、「最新の設備投資をして(③)、効率よくたくさん稼いで(①)、従業員の雇用や賃金に還元する(②)」。この王道の成長サイクルを回すことこそが、結果として付加価値額を押し上げることになるのです。

東海地方の堅実な企業様は、この「未来への投資と還元」のストーリーを描くのが非常に上手です。ぜひ、この3つのポイントを意識して、自社の計画を文章に落とし込んでみてください。

3. 絶対につまずけない「数値計画」で気を付けるポイントは?

  • 公募要領で指定された「付加価値額」や「賃上げ」の必須要件(既定値)を必ずクリアする
  • 実績値が、自社の「決算書」の数字と1円の狂いもなく一致しているか確認する
  • 「従業員数」や「給与総支給額」のルール(定義)を熟読し、勝手な解釈で計算しない

第2章で解説した文章(定性面)のストーリー構築と同じくらい重要なのが、エクセル等で作成する「数値計画(定量面)」です。
東海地方のモノづくり企業様は、製品の図面や加工における「ミクロン単位の誤差」には非常にシビアで一切の妥協を許しません。しかし、いざ事業計画書の売上目標や経費の数字となると、「どうせ未来の予測だから、だいたいこれくらいでいいだろう」と、少しどんぶり勘定になってしまう傾向が見受けられます。

しかし、補助金審査においてこの認識は非常に危険です。数値計画でのミスは、致命傷になります。

なぜなら、公募要領で定められた数字の要件を満たしていなかったり、計算の前提条件が間違っていたりすると、「要件未達(ルール違反)」として、せっかく何十時間もかけて書いた素晴らしい事業計画書をまともに読まれることすらなく、審査の土俵から落とされてしまうからです。
絶対にミスが許されない、我々プロのコンサルタントが現場で必ず目を光らせてチェックしている「数値計画の3つのポイント」を解説します。

3-1. 既定の数字(必須要件)を確実にクリアしているか?

  • 補助金の数値目標は「努力目標」ではなく、1円・0.1%でも下回れば即アウトの「絶対条件」
  • 「できない約束はしたくない」という堅実な姿勢が、要件未達(不採択)に直結してしまう
  • 付加価値額だけでなく、賃上げや最低賃金のクリアなど、複数のハードルを同時に超える必要がある

各補助金には、「事業終了後3〜5年で、付加価値額を年率平均3%以上増加させること」といった、絶対に満たさなければならない「必須要件」が定められています。

【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

東海地方のモノづくり企業様は、日頃からシビアなコスト管理や需要予測をされているため、「できない約束はしたくない」「もし達成できなかったら格好悪い」と、あえて低めの売上予測や利益計画を立てる傾向が非常に強いです。社内の経営計画としては、その堅実さは素晴らしいことです。
しかし、補助金の申請においては、その保守的なスタンスが命取りになります。
例えば、公募要領で「年率平均3.0%以上の増加」が必須とされているのに、エクセルで計算した結果が「2.9%の増加」になっていたとします。社内会議なら「ほぼ目標達成見込みだね」で済みますが、補助金審査では「要件未達により即不採択」となります。
目標年度において、公募要領が求める数字のハードルを「すべて」クリアできているか(エクセルの計算式が間違っていないか)、提出前に血眼になって確認してください。

補助金でよく設定される「必須の数値要件」の例

確認すべき数値項目よくある必須要件の基準(※補助金により異なります)プロのチェックポイント(ここを見落とさない!)
① 付加価値額 (または労働生産性)事業計画期間(3〜5年)において、年率平均3%以上増加すること。「単年」で3%ではなく、「年率平均」である点に注意。初年度に大きく落ち込む計画だと平均値がクリアできない場合があります。
② 給与支給総額事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させること。役員報酬は含まれません。従業員数が増えれば総額も上がりやすいですが、退職者が出た場合のリスクも加味して少し高めに設定するのが安全です。
③ 事業場内最低賃金計画期間中、自社内で最も時給の低い従業員の賃金を、地域別最低賃金+30円(または50円)以上にすること。正社員だけでなく、パートやアルバイトも対象です。毎年10月頃に最低賃金自体が引き上げられるため、それを見越した計画が必要です。

補助金の種類によっては、これらの要件を達成できなかった場合、「もらった補助金の返還義務」が生じるペナルティが設定されているものもあります。だからこそ、「無理なく、でも確実に要件をクリアできる」絶妙なラインの数値計画を練り上げる必要があるのです。

3-2. 実績値が決算書と合っているか?(「だいたい」は命取りです)

  • 過去の実績値は、提出する決算書の数字と「1円単位」で完全に一致させる
  • 決算書と補助金のフォーマットで勘定科目の名前が違うため、転記ミスに注意
  • 【製造業の罠】「製造原価報告書」の労務費の足し忘れが非常に多いので要注意!

数値計画には、未来の目標だけでなく過去数期分の「実績値」を入力する欄があります。ここで「だいたい合っているだろう」と適当に入力し、別添で提出する決算書と合計数値が合っていないミスが非常に多く発生します。
審査員はプロですので、「過去の自社の数字すら正確に把握できていない経営者が立てた未来の目標など、信用できない」と判断されてしまいます。

【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

愛知・岐阜・三重に多いモノづくり企業様が最も陥りやすいのが、「人件費」の入力ミスです。 補助金のフォーマットで人件費を入力する際、損益計算書の「給料手当(事務員などの給与)」だけを見て入力していませんか?
製造業の場合、現場で働く職人さんの給与は、決算書の後ろについている「製造原価報告書」の『労務費』に入っています。ここを足し忘れると、人件費の実績が実際の半分以下になってしまい、付加価値額などの計算がすべて狂ってしまいます。数字は必ず決算書全体を見て、正確に転記しましょう。

3-3. 数字の中身が「公募要領の定義」と合っている?(★最大の罠)

  • 決算書の数字をそのまま転記するのは危険。補助金ごとの「独自のルール」がある
  • 特に「従業員」や「給与」の定義は、役員やパートが含まれるかで大きく変わる
  • 公募要領の「注釈(小さい文字)」にこそ、合否を分ける罠が隠されている

数値計画において、これが最も怖いトラップです。「従業員数」や「給与総支給額」の数字は、決算書や源泉徴収票の数字をそのまま書けばいいわけではありません。補助金ごとに細かな「言葉の定義」が設定されています。
「うちの給与総額はこれくらいだ」という経営者様の認識と、公募要領のルールがズレていると、要件未達で不採択になったり、後から補助金の返還を求められたりする大惨事につながります。

間違えやすい数値の「定義」の例

項目一般的な勘違い(よくあるミス)公募要領での定義・注意点(プロの視点)
① 給与支給総額決算書の「人件費の合計」や、源泉徴収票の総額をそのまま書いてしまう。原則として「役員報酬」「法定福利費(会社負担の社会保険料など)」「退職金」は除外して計算します。※賞与(ボーナス)は含めます。
② 従業員数「社長の自分も含めて〇人だ」「週1回のアルバイトも全員入れるぞ」とカウントしてしまう。役員は含みません。また、パートやアルバイトであっても「常時使用する従業員(労働基準法上の規定など)」の条件を満たすかどうかでカウントが異なります。
③ 最低賃金「うちの正社員はみんな最低賃金より高いから大丈夫!」と安心してしまう。パートやアルバイトも含めた「全従業員」の中で、最も時給換算額が低い人の数字を見ます。※最低賃金ギリギリのパートさんがいる場合は要注意です。
経費(設備投資額)機械メーカーから来た見積書の「税込金額」で補助金額を計算してしまう。補助金は原則として「税抜金額」で申請・計算します(※免税事業者などの例外あり)。消費税分を含めて計算すると、申請額がズレて後から大問題になります。
【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

東海地方のモノづくり企業様は、ご家族で経営されている(役員が親族で占められている)ケースも多いと思います。そういった企業様が「給与支給総額」から「役員報酬」を正しく抜き取って計算し直すと、「対象となる給与のベースが思ったより少なかった!」と驚かれることがよくあります。 ベースの金額が変われば、「1.5%の賃上げ」に必要なアップ額も変わってきます。勝手な解釈で計算せず、必ず公募要領の「注釈(小さい文字)」まで熟読してください。

3-4. 実現可能な数値計画になっているか

  • 計画を良く見せようとする「根拠のない無謀な売上目標」は逆に評価を下げる
  • 計画書に書いた「売り方」や「現在の人員体制」で本当に達成できるか確認する
  • 面接(口頭審査)がある補助金では、売上の算出根拠は必ず突っ込まれるポイント

計画を良く見せようとするあまり、根拠のない無謀な売上目標(きれいな右肩上がりのグラフ)を立てるケースがよく見受けられます。しかし、審査員はプロですので「この人員体制と機械の稼働時間で、この売上を物理的にさばけるのか?」と冷静に分析しています。
事業計画書の文章編(第2章)で書いたマーケティング手法や、現在の社内の人員・生産能力と照らし合わせて、「本当に実現できる数値目標」を立ててください。

【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

大規模な補助金など、面接(口頭審査)がある補助金では、審査員から「この売上目標はどうやって算出したのですか?」と100%の確率で突っ込まれます。 「社長の勘です」「頑張って売ります」という回答は絶対にNGです。「商品単価〇〇円 × 展示会での想定獲得顧客数〇〇社 × 年間リピート回数」のように、算数レベルでしっかりと根拠を説明できるように準備しておきましょう。

4. 中小企業診断士・補助金コンサルタントに相談するメリットは?

  • 自社の想いや強みを、客観的な視点で最適な「ストーリー」へと構築・助言してくれる
  • 複雑な定義に基づいた数値計画の策定を、専門的な知見からバックアップしてくれる
  • 孤独な思考プロセスをプロが伴走することで、社長は現場の指揮と重要な経営判断に専念できる

事業計画書の作成は、経営者様にとって非常に孤独で、多大なエネルギーを必要とする作業です。しかし、誤解してはならないのは、事業計画の主役はあくまで「経営者様ご自身」であるということです。
専門家(中小企業診断士など)は、社長の代わりに書類を「作成代行」する存在ではありません。社長の頭の中にあるビジョンを引き出し、公募要領というルールに適合するようアドバイスを行う「最強の伴走者」です。プロの支援を受けることで、以下のようなメリットが得られます。

4-1. 貴社の想いを言語化し、採択水準の「ストーリー」を構築する

東海地方のモノづくり企業様は、「良いものを作る」ことに関しては一流ですが、その凄さを「言葉で論理的に説明する」ことに苦慮されるケースが多くあります。
専門家は、客観的な視点で強みの洗い出しをサポートし、社長が思い描く新規事業の構想を、審査員に伝わる論理的な「ストーリー」へと構築するための助言を行います。システム上の厳しい文字数制限の中で、どのエピソードを強調し、どのキーワードを盛り込むべきか。社長の熱意を最大限に引き出すための「道標」を提示します。

4-2. 根拠のある「数値計画」の策定を強力にバックアップ

第3章で解説した通り、補助金の数値計画には独自の複雑なルールが存在します。 専門家は、経営者様が検討された投資内容や売上予測に対し、公募要領の定義(役員報酬の除外や付加価値額の計算式など)に照らして、整合性が取れているか、計算に誤りがないかを緻密に確認・助言します。
「要件を満たしているか」の不安をプロと共に解消することで、経営者様は、その数字をどうやって達成するかという「実務的な戦略」を練ることに集中できます。

【中小企業診断士&プロのコンサルの視点】

補助金申請は、自社の未来を見つめ直す絶好の機会です。私たちは、社長が描く「攻めの経営」が、制度の壁に阻まれることなく形になるよう、法的・専門的な知見から全力でサポートいたします。
「この構想で要件を満たせるだろうか?」「自社の強みをどう表現すればいいのか?」と一人で悩む前に、ぜひ一度ご相談ください。共に、地域を支える次世代の事業計画を作り上げましょう。

5. 【FAQ】事業計画書の作成に関するよくある質問

 計画書は、文章が長ければ長いほど評価されますか?

 いいえ、長ければ良いというわけではありません。

審査員は膨大な数の計画書を読みます。要点を得ない長文よりも、結論が先に書かれ、適度に図表や箇条書きが使われている「スッキリとした読みやすい計画書」の方が高く評価されます。文字数制限ギリギリまで埋める必要は必ずしもありません。

以前不採択になった計画書を、そのまま再提出してもいいですか?

そのまま提出して採択される可能性は非常に低いです。

なぜ不採択になったのか(市場調査が甘かったのか、強みが活かされていなかったのか、数値に根拠がなかったのか)を分析し、ストーリーや数値をブラッシュアップしてから再提出する必要があります。

「自社の強み」がよく分かりません。どうやって見つければいいですか?

既存の顧客が「なぜ自社から買ってくれているのか」を考えてみてください。

強みは「世界初の技術」のような大げさなものである必要はありません。「納期が絶対に遅れない」「小ロットから対応できる」「長年の地元でのネットワークがある」など、当たり前にやっていることが立派な強みになります。これは専門家によるヒアリングで見つかることも多いです。

 パソコンが苦手なので、手書きで事業計画書を提出してもいいですか?

現在、ほとんどの補助金が「電子申請」または「電子ファイルのアップロード」となっています。

人そのため、ワード、エクセル、パワーポイントなどでの作成が必須となります。システム操作やパソコンでの書類作成が難しい場合は、専門家のサポートを活用することを強くお勧めします。

 中小企業診断士・補助金コンサルには、具体的にどのような支援をお願いできますか?

 計画書の文章作成サポートはもちろん、実現可能な「数値計画」の策定までトータルでお手伝いできます。

経営者様の頭の中にあるアイデアを審査員に伝わる論理的な文章に落とし込むだけでなく、設備投資による売上アップや人件費のシミュレーションなど、審査で非常に重視される「根拠のある数値計画」の作成も強力にバックアップします。

補助金活用のご相談は、信頼できる専門家へ

私たち合同会社デザイムは、【三重県 × 診断士 × 財務】のプロフェッショナルとして、四日市・津・桑名をはじめとする三重県全域の事業者様をサポートしています。 特に財務に関する視点と中小企業診断士の知見を活かし、貴社の「お金の悩み」を解決し、財務体質強化を伴走支援いたします。

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[執筆者] 
合同会社デザイム  近藤 竜明
中小企業診断士 / 獣医師 / 農業経営アドバイザー

大学卒業後、獣医師として家畜診療、動物園、野生動物の調査会社に勤務後、中小企業診断士を取得。
データを取り扱うことに長けており、数字から見えてくる会社のストーリーや強みを洗い出し、それを活かした戦略・改善策を提案。業務効率化や人材育成の支援も得意とする。

プロフィール