
中小企業の経営者の方から、こんな声をよく耳にします。
「採用してもすぐに辞めていく」
「社員のメンタル不調が増えている」
「人手不足のはずなのに、なぜか生産性が上がらない」――。
こうした悩みは、決してあなたの会社だけが抱えるものではありません。少子高齢化と労働人口の減少が進む今、人材を「確保し、定着させ、活かし続ける」ことは、企業規模を問わない経営課題の中心に位置づけられています。
そんななか、いま改めて注目されているのが「健康経営」です。健康経営とは、従業員の健康を経営の視点から戦略的に捉え、コストではなく投資として扱う考え方を指します。
さらに2028年には、これまで50人以上の事業場に限られていたストレスチェックの実施義務が、すべての事業場へと拡大される方針が打ち出されました。「義務化されてから慌てて対応する企業」と「先手を打って組織づくりに踏み出す企業」――
この差は、3年後の人材市場で大きな格差として表れるはずです。
本記事では、人事組織コンサルタントの視点から、健康経営の本質と中小企業がいま取り組むべきステップを丁寧に解説します。
目次
1. 健康経営とは?いま中小企業の経営者が知るべき基本と背景
経営者の皆様にとって、資金調達のルールが根本から変わる大きな転換期が近づいています。まずは、企業価値担保権の制度がどのような法律に基づき、いつからスタートするのか、その全体像を整理しておきましょう。
1-1. 健康経営の定義――「コスト」ではなく「投資」という発想転換
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する経営手法のことです。経済産業省は健康経営を「従業員等の健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益性等を高める投資である」との考え方に基づき、健康管理を経営課題として位置づけて取り組むことと定義しています。
ここで重要なのは、「コスト」ではなく「投資」という発想転換です。福利厚生として一律に健康診断を実施するだけの段階から、健康課題をデータで把握し、経営戦略と紐づけて改善する段階へと、考え方そのものをアップデートしていくことが求められています。

従業員が心身ともに健康な状態で働ける職場は、欠勤・休職の減少、エンゲージメントの向上、離職率の低下といった目に見える成果につながります。さらに、健康経営に積極的に取り組む企業は、外部からの評価や採用市場での存在感においても、確実に差を広げているのです。
1-2. 経済産業省が推進する健康経営優良法人認定制度とは
経済産業省は、特に優良な健康経営を実践している企業を「見える化」する仕組みとして、「健康経営優良法人認定制度」を運営しています。日本健康会議が認定するこの制度は、大規模法人部門と中小規模法人部門の2つに分かれており、毎年3月に新たな認定法人が公表されます。
中小規模法人部門の認定要件は大きく分けて、「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」の5領域があります。それぞれに具体的なチェック項目が設けられており、自社の取り組み状況を整理することで、抜けや漏れが見える仕組みになっています。
認定を受けた企業は、専用ロゴマークを名刺・ウェブサイト・採用資料などで活用でき、対外的な信頼性の証として機能します。多くの中小企業にとって、健康経営優良法人認定は、自社の取り組みを言語化し、対外的に伝えるための“器”としても役立つ制度です。
1-3. なぜ今、中小企業にこそ健康経営が必要なのか――人材獲得競争の現実
人材獲得競争は年々厳しさを増しています。とくに中小企業は、大企業のような知名度や給与水準で勝負することが難しく、「働きやすさ」「人を大切にする姿勢」など、別の軸で選ばれる工夫が必要です。求職者の意識調査では、「企業の健康への取り組み」を就職先選びの重要要素に挙げる声が年々増えており、特にミレニアル世代・Z世代でその傾向は顕著です。
健康経営に取り組む企業は、求職者の目に「人を大切にする会社」として映り、採用力を底上げする力を持ちます。加えて、限られた人数で経営を回す中小企業ほど、一人ひとりの欠勤・休職が業績に直結します。だからこそ、まずは小さくとも、健康経営の第一歩を踏み出すことが、組織の持続可能性を高める近道となるのです。
1-4. 健康経営が掲げるウェルビーイングの向上は、強い組織づくりに直結する優良法人認定制度とは
健康経営が目指す先には、「ウェルビーイング(Well-being)」の向上があります。ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に良好な状態を指す概念で、単に病気でないこと(ヘルス)よりも一段広い、人の“持続的な良き状態”を表します。健康経営は、福利厚生の延長ではなく、このウェルビーイングを組織全体へ広げていく経営アプローチであると捉え直すと、その意義はぐっと立体的に見えてきます。
そして、ウェルビーイングが高い組織は、結果として「強い組織」となります。鍵となるのは、個人の「WILL-WANT」――「こうありたい・こうなりたい」という想いと、組織が掲げる「WILL-WANT」――「組織として実現したい姿」の方向性が揃っていることです。両者のベクトルが重なるとき、従業員は仕事を“やらされるもの”ではなく“自分の人生と地続きのもの”として捉えるようになり、帰属意識・貢献意識・成長欲が自然と高まっていきます。

これは精神論ではありません。心身が健やかで、自分の意思と組織の方向が重なる職場では、エンゲージメントや生産性、定着率といった経営指標が連動して改善することが、各種調査でも明らかになっています。ウェルビーイングを起点に、個と組織のWILL-WANTを揃える――この発想こそが、人材獲得が難しい時代に中小企業が選び取るべき、最も本質的な“強い組織”のつくり方です。
2.2028年ストレスチェック全事業場義務化――法改正の本質を読み解く
2-1. 労働安全衛生法改正の経緯と2028年施行のスケジュール
ストレスチェック制度は、2014年の労働安全衛生法改正で新設され、2015年12月から従業員50人以上の事業場で年1回の実施が義務化されました。この制度は、メンタルヘルス不調の一次予防(未然防止)を目的としており、職場のストレス要因に企業として向き合う、画期的な仕組みでした。
しかし、これまで50人未満の事業場については「努力義務」にとどまっており、メンタルヘルス対策が手薄になりやすい中小企業ほど制度の網目から漏れてしまうという矛盾が指摘されてきました。
こうした課題を踏まえ、2025年5月に労働安全衛生法が改正され、ストレスチェックの実施義務がすべての事業場へと拡大される方針が打ち出されました。施行は法改正から3年以内とされており、遅くとも2028年までに準備を整える必要があります。
2-2. 50人未満の事業場に何が求められるのか――実務面の変化
50人未満の事業場にストレスチェックが義務化されると、何が変わるのでしょうか。実務面で押さえておきたいポイントは大きく3つあります。
ポイントその1:年に1回、全従業員に対して実施
ストレスチェックを年1回、全従業員に対して実施する体制が必要になります。設問の準備、実施者(医師・保健師・精神保健福祉士など)の確保、結果の通知、集計・分析までを年間スケジュールに組み込む運用設計が求められます。
ポイントその2:医師による面接体制の構築
高ストレス者で、希望者には医師の面接の実施が必要に高ストレス者として判定された従業員から面接指導の申し出があった場合、医師による面接を実施する仕組みが必要です。中小企業の場合、産業医を選任していないケースも多いため、地域産業保健センターや外部医師との連携を事前に整えておくことが現実的な選択肢となります。
ポイントその3:ストレスチェクの結果の取り扱いの体制構築
結果の取り扱いには厳格な守秘義務が課されます。ストレスチェック結果は、本人の同意なく事業者が把握することはできず、人事評価や配置転換に利用することも禁じられています。この基本ルールの理解と運用ルールの整備は、義務化対応の入り口として欠かせません。
2-3. 義務化の「本当の意味」――拡大する企業の安全配慮義務リスクに歯止めをかける
2028年のストレスチェック全事業場義務化を、単なる「コンプライアンス対応」と捉えてしまうと本質を見誤ります。この義務化の本当の意味は、拡大の一途を辿る企業の「安全配慮義務」に対して合理的な歯止めをかける――この一点にあると、人事組織コンサルタントの視点から考えています。
厚生労働省が公表する労災統計を見ると、企業が問われる責任の重さは年々増しています。令和6年度(2024年度)の過労死等にかかる労災支給決定件数は1,304件と過去最多を更新。とくに精神障害による労災認定は1,055件にのぼり、初の1,000件超えとなって6年連続で増加しました。原因別ではパワーハラスメントがトップで、近年はカスタマーハラスメント(カスハラ)が新たに認定基準に加わるなど、企業が向き合うべき領域は拡張し続けています。

こうした労災認定の積み重ねの背景には、判例によって確立されてきた企業の安全配慮義務の存在があります。裁判例では、主に次の5つの領域で事業者の義務違反が問われてきました。
【裁判例で問われた企業の安全配慮義務(5領域)】
①作業環境整備義務 / ②衛生教育実施義務 / ③適正労働条件措置義務 / ④健康管理義務 / ⑤適正労働配置義務
これらの義務領域は時代とともに拡大しており、企業は労働者の心身の状況や病状を可能な限り把握することが求められます。一方で、労働者本人のプライバシーや健康情報は厚く保護される必要があり、両者のバランスは極めて難しい運用を企業に強いています。さらに、労働者本人にも「自己保健義務」――自らの健康を保つために必要な努力をする義務――が定められており、企業の義務と労働者の義務が交錯する領域は、ますます複雑になっています。
ここで重要な役割を果たすのが、ストレスチェック制度です。ストレスチェックは、個々の労働者にかかる健康リスクを「予見可能性」という形で、あらかじめ抽出するための仕組みです。万一、労災や健康被害が発生した場合に、企業がそのリスクを予見し、回避のための措置を講じていたか――この点を客観的に示せるかどうかが、その後の判断を大きく左右します。措置を講じても回避しえなかったのか、対応しなかったがゆえに起こってしまったのか。この線引きがあるからこそ、無限定に拡大しがちな安全配慮義務に対して、合理的な歯止めをかけられるのです。
そしてもうひとつの本質的な意義は、事業者・管理監督者・労働者本人――それぞれが果たすべき役割を明確に交通整理することにあります。事業者は職場環境の整備と健康管理体制の構築を、管理監督者は日常的な観察と早期支援を、労働者本人は自己保健義務に基づく健康行動を担う。この三者の役割分担が成立してはじめて、心身の健康を守る職場が機能します。

ストレスチェックを規模を問わずすべての企業に義務づけることで、この役割分担を“当たり前のもの”として職場に定着させていく――これこそが、2028年義務化の本当の意味であり、企業と労働者の双方を守るための制度設計だと、私たちは捉えています。ストレスチェックの実施は、労働者保護だけではないということです。
2-4. 【深掘り考察】なぜ健康経営は義務化“以前から”ストレスチェックを要件としていたのか
健康経営優良法人認定制度では、制度発足当初からストレスチェックの実施が事実上の必須要件として位置づけられてきました。前項で述べた「拡大する安全配慮義務に歯止めをかけ、三者の役割を交通整理する」という観点から見ると、健康経営の制度設計者がいかに先見性をもってこの仕組みを取り入れてきたかが浮かび上がります。
健康経営は、身体だけでなくこころの健康も含めた包括的な組織のウェルビーイングを目指す枠組みです。その入り口にストレスチェックを据えてきたのは、組織のリスクと個人のリスクを同時に「見える化」し、事業者・管理監督者・労働者本人の役割を、データに基づいて分担できる仕組みだからにほかなりません。組織開発・人事の視点で言えば、ストレスチェックは「組織の声」を客観的なデータとして可視化する数少ない手段であり、経営者の目線では見えにくい現場の課題を、構造的に把握できる定点観測の役割を担います。
つまり健康経営は、義務化を待たずにストレスチェックを“積極的な経営ツール”として再定義してきた制度――そう捉え直すと、2028年の全事業場義務化は、ようやく国の制度が健康経営の先行的な思想に追いついてきた、と解釈することもできるのです。
3.健康経営がもたらす5つのメリット――データで見る「投資対効果」
3-1. メリット①|離職率の劇的な改善
民間調査機関の調査によれば、健康経営優良法人に認定された中小企業の平均離職率はおよそ4.6%程度と報告されており、全国平均の11.1%を大きく下回る水準にあります。すなわち、健康経営に取り組む企業では、離職率がほぼ半分以下に抑えられている計算になります。

離職率の低下は、採用コスト・教育コスト・引き継ぎコストの削減に直結します。
ある中小製造業では、健康経営の取り組み開始から3年で年間離職者数が半減し、採用にかかる総コストを年300万円以上圧縮できたという報告もあります。
離職率は組織の健全性を映す鏡です。数字が改善するということは、社員が「ここで働き続けたい」と感じる環境が生まれている何よりの証拠になります。
3-2. メリット②|生産性向上とプレゼンティーイズムの解消
健康経営が生産性に与える効果は、欠勤の減少(アブセンティーイズムの改善)だけにとどまりません。
実は、より大きな経営インパクトを持つのは「プレゼンティーイズム」の解消です。プレゼンティーイズムとは、出勤しているものの心身の不調により本来のパフォーマンスを発揮できていない状態を指します。
WHOや経済産業省の調査では、企業が抱える健康関連コストのうち、医療費・薬剤費よりもはるかに大きな割合をプレゼンティーイズムによる損失が占めると報告されています。健康経営によって睡眠・食事・運動習慣が整い、メンタル面の安定が得られると、目に見えにくいパフォーマンス低下が解消され、組織全体の生産性が底上げされていきます。これは、業務改善や人事制度改革では届きにくい領域への、本質的な投資といえます。
3-3. メリット③|採用力の強化――求職者が「選ぶ基準」の変化
過去の過剰な設備投資などで重い借入金(過剰債務)を抱えてしまい、資金繰りに行き詰まっている企業を再生させる場面でも活用が期待されます。
例えば、特定の製品には高い技術力と需要があるものの、過去の負債が重荷になっている製造業の場合、「第二会社方式」という再生手法が取られることがあります。これは、優良な事業だけを切り出して新しい会社に移し、事業を継続、成長させる、古い会社に負債を残して特別清算するという手法です。
この新しい会社が事業を再スタートするための運転資金を調達する際、有形資産が不足していても、事業の将来性(技術力や取引先との関係など)を評価する企業価値担保権を活用することで、銀行から必要な「再生資金」を引き出し、再チャレンジに向かうことが可能になります。
求職者の選定基準は、給与や知名度から「働き方」「企業文化」へとシフトしています。とくに中小企業の採用市場では、健康経営優良法人認定の有無が、応募者数や内定承諾率に明確な差を生み始めています。求人媒体での認定マーク掲示、採用ページでの取り組み紹介、面接時の社内環境説明――これらは、大企業のような大規模な採用予算を持たない中小企業にとって、差別化の武器そのものです。
「人を大切にする会社」を言葉だけで語るのではなく、第三者認定という形で証明する。これが、中小企業の採用ブランディングにおいて極めて強力なメッセージとなります。
3-4. メリット④|企業イメージ・ブランド価値の向上
健康経営優良法人認定は、社外への発信力を高めるツールとしても機能します。プレスリリース、自社サイト、SNS、商品パッケージ――発信できる場面は多岐にわたり、取引先・顧客・投資家・地域社会といったステークホルダー全方位への信頼性向上につながります。
特にBtoB取引の場面では、取引先選定の評価軸として「ESG」「サステナビリティ」が重視されるようになり、健康経営はそのSocial(社会的責任)の中核領域に位置づけられます。中小企業であっても、大手取引先のサプライチェーン要件に応えるための材料として、健康経営の取り組みは大きな意味を持ち始めています。
3-5. メリット⑤|金融機関・取引先からの信頼性向上と融資条件の優遇
金融機関は、決算書の数字だけでなく、「その会社が継続して稼げる体制を持っているか」も見ています。離職率が高い、休職者が多い、管理職が疲弊している会社は、将来の収益力にも不安が残ります。
逆に、健康経営に取り組み、人材の定着や職場環境の改善を数字で説明できる会社は、金融機関に対しても「持続的に成長できる会社」と伝えやすくなります。
また、商工会議所や保険組合主催の健康経営セミナー・表彰制度を通じて、地域内での認知度や経営者ネットワークの広がりも期待できます。「人を大切にする経営」が、有利な経済条件にまでつながる時代が、すでに到来しているのです。
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4. 【2026年最新】健康経営優良法人の認定基準はこう変わった
4-1. 2026年の制度改定ポイント――「量から質」へのシフト(健康経営2.0)
2026年度の健康経営優良法人認定制度では、「量から質」への大きな転換――いわゆる健康経営2.0――が打ち出されています。これまでは取り組み項目数の充足度が重視されていましたが、新基準では「取り組みの内容と成果の質」「組織への浸透度」が問われるようになりました。
この背景には、認定取得を目的化してしまい、実態が伴わない“形だけの健康経営”企業が一定数存在してしまったという反省があります。これからは、施策が現場で実際に機能しているか、従業員の意識・行動の変容に結びついているかが、認定の重要な分水嶺となります。
4-2. 中小規模法人部門の新評価軸「組織浸透」「健康風土の把握」
中小規模法人部門の2026年認定基準では、「組織浸透」「健康風土の把握」が新たな評価軸として加わりました。これは、施策の実施有無ではなく、その施策が従業員にどう受け止められ、どう組織文化に定着しているかを問う設問群です。
具体的には、従業員アンケートでの満足度や認知度の数値、各種データを基にした効果検証の有無、PDCAサイクルの実装状況などが問われます。中小企業にとっては、これまで以上に「現場の声をどう拾い、どう反映するか」が問われる時代の到来です。
4-3. ブライト500・ネクストブライト1000――中小企業が目指すべき認定レベル
中小規模法人部門には、上位認定として「ブライト500」、それに次ぐ「ネクストブライト1000」という冠制度が設けられています。ブライト500は、中小規模法人部門の認定企業の中でも特に優れた取り組みを行う上位500社が選出されるもの。ネクストブライト1000は、ブライト500に次ぐ上位企業を表彰する制度として導入された比較的新しい区分です。
2026年3月、経済産業省の発表によれば、健康経営優良法人認定数は中小規模法人部門だけで23,085法人にのぼり、過去最多を更新しています。それだけ多くの企業が健康経営に乗り出すなか、認定取得そのものはもちろん、そのなかでさらに上位を目指すという2段階の戦略が、中小企業の選択肢として現実味を帯びてきました。
5. 中小企業でもできる!健康経営の具体的な始め方3ステップ
5-1. ステップ①|「健康経営宣言」と推進体制の整備――まずは経営者の意志表明から
健康経営の第一歩は、経営者の意志表明から始まります。
「私たちは、従業員の健康を経営の中心に据えます」――
この一文をシンプルでも明確に社内外へ発信することが、すべての取り組みの土台となります。
具体的には、健康経営宣言を作成し、社内掲示・自社サイト・採用資料へ掲載することから始めます。同時に、健康経営を推進する担当者または委員会を立ち上げ、誰が・何を・いつまでに進めるのかを明文化します。中小企業の場合、専任者の配置が難しければ、人事担当者や経営者自身が兼任する形でも問題ありません。重要なのは、「やる」と決め、誰がボールを持つかを明らかにすることです。
5-2. ステップ②|現状把握と課題の可視化――ストレスチェック・健康診断データの活用
次のステップは、自社の健康課題を客観的に把握する作業です。ここで活用すべき情報源は2つあります。1つは健康診断の結果データ。年齢別・部署別の有所見率、肥満率、血圧・血糖値といった指標を集計することで、自社の特性が見えてきます。
もう1つはストレスチェックの結果。集団分析の結果から、職場ごとのストレス傾向、コミュニケーションの状態、業務負荷の偏りなどが浮かび上がります。
これらのデータを突き合わせると、「数字で見える健康課題」と「現場で起きている組織課題」がつながり、優先順位をつけて施策を打てるようになります。データは語ります。それを聞くか聞かないかは、経営者次第です。
5-3. ステップ③|施策の実行と効果測定――小さく始めて継続するPDCAサイクル
課題が見えたら、次は施策の実行です。ここでのポイントは、「小さく始めて、続ける」こと。一気にすべてを変えようとすると、現場の負担が大きくなり、形骸化の入り口となってしまいます。
たとえば、運動不足が課題ならウォーキングイベントから、メンタル面の課題ならストレッチや1on1ミーティングの導入から始めるなど、現実的な一歩を選びます。施策実行後は、3〜6カ月ごとに簡単なアンケートや健康指標の再測定を行い、効果を見える化します。このPDCAサイクルこそが、健康経営の継続性と成果の質を担保する核心です。完璧を目指すよりも、続けられる仕組みづくりを優先しましょう。
5-4. 【成功事例】中小企業の健康経営取り組みビフォー・アフター
ここでは、よくある中小企業の取り組みを一般化したビフォー・アフター像をご紹介します。
【ビフォー】
従業員50名の地方サービス業A社では、健康診断は外部委託で実施しているものの、結果を集計・分析する習慣がなく、メンタル不調による休職者が毎年2〜3名発生。離職率も10%を超える状態が続いていました。【アフター】
健康経営宣言の発信からスタートし、ストレスチェック結果を基に、課題部署への上司面談支援、運動推進キャンペーン、1on1の月1実施を導入。3年後には、メンタル不調による休職者はほぼゼロに、離職率も4%台へと改善しました。
この事例が示すのは、特別な投資ではなく、「データに向き合い、現場の声を聞き、続ける」という姿勢の積み重ねが、中小企業でも確かな成果につながるということです。
6.健康経営優良法人の認定取得に「コンサル」は必要なのか?(外注VS内製)
6-1. 自力で取り組む際の3つの壁
中小企業が自力で健康経営に取り組むとき、典型的に3つの壁にぶつかります。
第一の壁は、ノウハウ不足です。健康経営優良法人の認定基準は、毎年の改定があり、評価項目も多岐にわたります。「どこから手をつけ、何を優先するか」を判断するには、制度設計の意図や前年度からの変更点を読み解く専門性が求められます。
第二の壁は、リソース不足です。中小企業では、健康経営の推進担当者は人事・総務との兼務が一般的。書類作成、データ集計、社内調整などに想像以上の工数が必要となり、本業との両立が難しくなりがちです。
第三の壁は、継続の難しさです。一度認定を取得しても、毎年の更新で同等以上の取り組みを示し続ける必要があります。担当者の異動・退職で取り組みが途切れたり、PDCAが回らずに形骸化する企業は少なくありません。これらの壁は、いずれも“一時の頑張り”では乗り越えられない構造的な課題です。
6-2. コンサルティングを活用するメリット
外部コンサルティングを活用する最大のメリットは、3つあります。
1つ目は、認定取得率の向上です。認定基準を熟知した専門家が伴走することで、評価項目の優先順位付け、書類作成、社内体制の整備が体系的に進み、認定取得の確実性が高まります。
2つ目は、担当者の工数削減です。書類作成・データ整理・スケジュール管理といった事務作業を代行することで、社内担当者の工数を約80%削減した事例もあります。社内のリソースを、施策の中身そのものに集中させられるのが大きな価値です。
3つ目は、認定取得後の組織への浸透設計まで伴走できることです。認定取得をゴールとせず、それを起点に組織文化として根づかせるロードマップを描けるのは、外部の伴走者がいるからこそ。「認定はとれたが、現場は変わらなかった」という残念な結果を避けるためにも、専門家との連携は強い後押しになります。
6-3. 費用相場と「失敗しないコンサル選び」のチェックリスト
健康経営コンサルティングの費用相場には、いくつかの体系があります。着手金型は、認定支援を一括で依頼するスタイルで、相場は30〜80万円程度。月額顧問型は、認定取得後の継続支援を前提に、月5〜20万円程度の幅があります。成果報酬型は、認定取得を成功条件にした料金体系で、近年広がりを見せていますが、対応範囲がやや限定される傾向にあります。
費用そのものより重要なのは、「自社にとって本当に効くコンサルか」を見極めることです。次の6項目を、コンサル選定時のチェックリストとして活用してください。
✅ 失敗しないコンサル選びチェックリスト
□ ストレスチェック実施者を担える有資格者(精神保健福祉士・産業医等)が支援チームにいるか
□ ストレスチェックから認定申請まで、別業者に分割せずワンストップで対応できるか
□ 認定取得「後」の運用支援まで含むか
□ 自社の業種・規模での実績があるか
□ 経営層と現場の両方に伴走できるか
□ 自社の文化に合う施策提案か(テンプレ提案でないか)
💡 デザイムの強み|「ストレスチェック実施 × 認定支援」を一気通貫で
健康経営優良法人の認定要件には、ストレスチェックの実施が含まれます(2026年認定基準)。多くの企業はストレスチェックを別業者に外部委託する一方、認定申請支援は別のコンサルに依頼するため、情報の分断・コストの二重化が起きがちです。
デザイムでは、所属コンサルタントが精神保健福祉士の国家資格を保有し、所定の研修も修了済みのため、ストレスチェック実施者を担うことが可能です(労働安全衛生規則 第52条の10)。人事組織コンサルティングで培った組織理解と、メンタルヘルスの専門性をかけ合わせ、認定基準に準拠した診断・改善提案・申請支援まで一気通貫で対応できる体制を整えています。
▼ デザイムが提供できる伴走体制
・精神保健福祉士(ストレスチェックの実施)
・人事組織コンサルティング(認定基準に沿った診断・改善提案・申請支援)
=「実施・分析・改善・申請」を分断せず、ワンストップで進められる伴走体制
7. 【FAQ】健康経営に関するよくある質問
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健康経営に取り組むのに費用はどのくらいかかる?
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2規模や取り組み内容により幅がありますが、自社運用の場合、ストレスチェック実施・健康診断追加項目・社内施策で年間数十万円〜が目安です。コンサル活用時は別途、初期30〜80万円・月額5〜20万円程度が一般的です。社内リソースとのバランスで判断するとよいでしょう。
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専任の担当者を置く余裕がないが大丈夫?
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多くの中小企業では、人事・総務担当者が兼務する形で進めています。重要なのは「ボールを持つ人」を1人決めること。経営者自らが推進役を担うケースもあり、組織規模に応じた現実的な体制で問題ありません。外部コンサルの活用は、内部リソース不足を補う有効な選択肢です。
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ストレスチェックの外部委託はどうすればいい?
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ストレスチェックは、医師・保健師・精神保健福祉士など有資格の実施者に委託できます。委託先を選ぶ際は、守秘義務の遵守、結果分析の質、面接指導までの一貫対応が可能かを確認しましょう。健康経営支援とセットで依頼できる事業者を選ぶと、運用が一段と効率化されます。
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健康経営優良法人の認定を受けるまでの期間は?
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一般的に、健康経営宣言から認定取得まで約1年〜1年半が目安となります。認定申請は毎年8〜10月ごろが受付期間で、認定発表は翌年3月。逆算すると、申請の半年前から本格的な準備に着手するのが現実的なスケジュールです。
8.まとめ|2028年を「受け身の義務化」にしない――健康経営で“選ばれる組織”をつくろう
2028年のストレスチェック全事業場義務化は、すべての中小企業にとって、避けて通れない節目となります。しかし、それは「対応に追われるイベント」ではなく、「自社の組織を見つめ直す絶好のチャンス」です。本記事の要点を振り返ります。
- 健康経営は単なる福利厚生の延長ではなく、人材獲得・定着・生産性向上を実現する経営戦略である
- 2028年の義務化を受け身で迎えるか、先手で動くかで、3年後の人材市場における自社のポジションは大きく変わる
- 健康経営優良法人認定は、取り組みを言語化し、対外的に伝える有効なフレームとなる
- 自力での取り組みには壁があり、専門家との伴走によって認定取得率と組織浸透の質を大きく高められる
「義務化を待つ企業」と「先手で動く企業」の差は、これから3年で確実に開いていきます。あなたの会社が、未来の人材市場で“選ばれる組織”であるために、今日から動き出しましょう。
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今年の申請は2026年8月〜10月(予定)。今から準備を始めれば、2027年4月の健康経営優良法人認定が射程に入ります。デザイムでは、ストレスチェックの実施から認定申請、そして認定後の組織浸透まで、人事組織コンサルタントが一気通貫で伴走します。まずは無料相談から、お気軽にお問い合わせください。
健康経営の実践に興味のある経営者様へ【初回相談無料】
合同会社デザイムでは、三重県・四日市市を中心に、中小企業の健康経営、ストレスチェック対応、健康経営優良法人認定、人事制度構築、採用・定着支援に関する経営相談を受け付けています。
デザイムには、中小企業診断士に加え、精神保健福祉士の国家資格を持つコンサルタントが在籍しています。ストレスチェックの実施・分析だけでなく、そこから見える組織課題の整理、管理職支援、人事評価制度の見直し、採用・定着に向けた組織づくりまで、経営と人事の両面から伴走します。
「2028年のストレスチェック義務化に向けて、何から準備すればよいかわからない」
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[執筆者]
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合同会社デザイム コンサルタント 小笠原梓
中小企業診断士・精神保健福祉士
大学卒業後、リクルート株式会社を経て、ソフトウェア会社の経営管理部門にて、組織設計、人事制度構築、採用、労務など、企業の成長を支える管理部門業務に従事。
中小企業診断士に加え、対人心理と福祉の国家資格である精神保健福祉士を保有。現在は、組織開発、人事評価制度、採用・定着支援を中心に、企業の「稼ぐ力」を高める組織文化づくりを支援している。
精神保健福祉士としての専門性を活かし、ストレスチェックの実施・分析、メンタルヘルス対策、健康経営優良法人認定の取得支援にも対応している。

